そして、バイデン大統領は7月9日、国内市場の競争促進のための大統領令に署名した。大企業による寡占市場や不要な規制で競争が抑制されている市場に関して、法令の執行強化や規制の撤廃を進めるよう、担当閣僚らに具体策の検討・実施を指示した。反トラスト法(独占禁止法)を所管する司法省とアメリカ連邦取引委員会(FTC)に対しては、同法を積極的に執行するよう求めた。
対象はITだけではないが、重点的に競争促進に取り組む市場に、「インターネットサービス」も含まれている。
バイデン大統領は、この40年間、国内で競争が抑制されてきたため、中間所得層が不要なコストを払わされたと指摘し、「競争のない資本主義は資本主義ではない。搾取だ」とした。そして、「独占企業や悪質な合併は許さない」と強調した。
怪物が現れたという認識では同じ
このように、両国の政府とも、IT巨大企業の現状を放置するわけにはいかないと考えている。
経済力がこの分野にあまりに集中しすぎている。ほかとの格差がこれだけ開いてしまうと、放置するわけにはいかない。限度を超えた。という認識があるのだろう。
アメリカの急回復で成長率が高まっていることが話題となっている。それでも、2021年の4~6月期の実質GDP成長率は、対前期比・年率換算で6.5%だ。
それに対して、巨大IT企業の利益は、冒頭で見たように、対前年比50%増とか100%増だ。あまりに大きな違いと言わざるをえない。
われわれ日本人から見ても、冒頭に述べたようなアメリカIT企業の著しい増益状況を見ると、コロナ禍で多くの人が苦しんでいるにもかかわらずこうしたことが起きるのはなんともおかしいと、素朴に考えざるをえない。
巨大IT企業が、これまではなかった怪物であるとことが誰の目にも明らかになった。
アメリカも中国も、これらの企業が新しい技術を開発し、経済を牽引することを認めている。それが国を強めることも承知している。米中が世界覇権を争う中で、それが重要な意味を持つこともわかっている。
しかしそれにもかかわらず、あまりの富の集中を放置すれば、社会的な不満が高まり、経済運営に支障が出るだろうという認識を、 アメリカの指導者も中国の指導者も、持たざるをえなくなっているのだ。
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