アマゾンとアリババの株価が映す米中政策の評価 巨大IT企業への富の集中を懸念する点は同じだが

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アマゾンの株価は、2020年初めには1900ドル程度であった。それから上昇を続け、2020年7月終わりに3000ドルを超えた。2021年4月末には3400ドルを超えた。つまり、コロナ前に比べて8割程度上昇した。新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの人々が、リアルな店舗からeコマースに移動したからだ。第3四半期の売上高見通しが市場の予測を下回ったことから2021年7月末に急落したが、それでも3328ドルだ。

他方で、アリババの株価は、2020年初めには210HKD(香港ドル)程度だった。そして、10月末には307.4HKDになった。

しかし、そこをピークとして、その後は下落を続けている。21年7月末の株価は189HKDであり、ピーク時の6割程度になっている。

なぜこのような差が生じるのか?

それは、中国当局がIT企業の締め付けを強化しているからだ。

なぜ強化しているのか? 理由はいくつも考えられる。共産党の対抗勢力が現れることを食い止めるため、米中対立の中でデータがアメリカに流れるのを防止するため、アメリカ市場での上場は中国のプライドを傷つけるから、等々だ。

ただ、巨大IT企業へのあまりの富の集中に、国民の間で不満が高まっていることも大きな理由であることは間違いない。

アメリカ政府もIT企業を統制しようとしている

アメリカも、巨大IT企業に対して何も制約を加えていないわけではない。

昨年、グーグルとフェイスブックは、独占禁止法違反の疑いで提訴された(フェイスブック提訴は、その後取り下げられた)。

バイデン政権になって、アマゾンに批判的なリナ・カーン氏がFTC委員長に指名されるなど、規制派が重要ポストを占めたことから、規制がさらに強化されるだろうとの見通しがある。

またトランプ政権はデジタル課税に否定的な立場をとっていたが、6月のG7では、国際的デジタル課税を導入することに同意した。

さらに、サードパーティークッキーの規制も行われている。グーグルやフェイスブックの重要な収入源であったターゲティング広告が、これによって大きな影響を受けようとしている。

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