教会とスポーツ、ちょっと意外な関係 第8回 日本は体育会系教育に期待しすぎ

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社会的スキルが培われるドイツのスポーツ

ドイツでもスポーツに対する教育的期待はある。一般的にドイツにおけるスポーツは地域のスポーツクラブ(NPOと理解すると分かりやすい)のメンバーになって行うが、青少年に対しては社会的スキルの獲得といった側面での期待がある。

 社会的スキルとは、自尊感情をもつこと、責任感を伴うリーダーシップ、他者への共感、他者との協調、一定の批判能力いったことを指すが、要は社会的に妥当性のある行動がとれる能力のことである。

 人数の多いスポーツクラブでは年齢別のサッカーチームを作っていることがある。例えば10代後半のメンバーが中学生ぐらいの年齢のチームのトレーナーとして練習や試合で活躍。また中学生程度のメンバーが小学校の低学年程度の年齢のチームのサブ・トレーナーとして練習の補助を行う。そんなケースが散見される。

 筆者が住むエアランゲン市のあるスポーツクラブのサッカーの指導に長年関わっている男性は「これによって責任感が培われる」と述べる。ドイツの学校では先輩・後輩システムがないことから、スポーツクラブは社会的スキル獲得のよい機会になってくるというわけだ。

 日本の先輩・後輩システムでも学校行事や部活で下級生に対して責任を持つことが生まれやすく、それが社会的スキル獲得の訓練になる一面がある。しかし、第3回でも述べたように、ドイツのスポーツクラブでは子供から大人までメンバーがいる。日本の部活のように卒業もなければ引退もない。

 つまり人間関係が学校で完結してしまいがちな日本に比べ、ドイツのスポーツクラブのほうがより普遍的な老若男女の社交が成り立つ。やや余談めくが、主に西洋の学生に比べて、日本の学生のほうが子供っぽいといわれることがある。学校外の人間との社交が少ないことが「子供っぽさ」につながっているのかもしれない。

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