教会とスポーツ、ちょっと意外な関係

第8回 日本は体育会系教育に期待しすぎ

普遍的な価値をもとに

ひるがえって、日本の体育会系の若者はバスを降りるときにも「ありがとうございました」、コンビニで買い物しても「失礼します」と挨拶をする者も少なくない。明朗快活なこういった態度は確かに見ていて気持ちはいい。が、ドイツの日常生活では、スーパーで買い物するときにレジ係の人と「こんにちは」「さようなら」とごく普通に挨拶を交わす。挨拶だけに着目すると、体育会系でなければ他人ときちんと挨拶できない、というイメージがあるとすれば、それは奇妙なことでもある。

 部活における上下関係という秩序も健全に動くうちはよい。また「いちおう」上下関係があるだけで、スポーツを共通項に先輩も後輩も一緒にコロコロ笑いながら毎日を過ごすクラブはきっとよい思い出が残るであろう。

 しかし上下関係のもと、勝利のために指導者による無理なトレーニングがはびこり、いじめがおこるようでは、その「苦行」を生き延びる「勝ち組」のためだけのスポーツになってしまう。

 ここで再びドイツをみると、スポーツを通して公正、寛容、平等といった社会的な普遍的価値を身に付ける教育的期待がある。これらの価値はキリスト教という社会の「価値のOS」とも重なるわけだ。そのせいか前述のようにスポーツの祭典の開会式で礼拝が行われるのも珍しいことではない。

 日本の文科省のサイトの「体育の目的の具体的な内容~すべての子どもたちが身に付けるべきもの~」というページを見ると、フェアプレーや協力・責任に関する「態度」に言及はしている。しかし体育会系では上下関係や規律で挨拶や精神的な強さは養われるが、実際にこうした普遍的価値を強調されることは、少ないのではないか。ドイツのように信仰をもってかかわることは難しいだろうが、普遍的価値をもとにした、社会的スキルを養う場としてスポーツを捉えなおすことが大切だと思う。

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