若者のほうから見たら、何が変なのかは、自分たちは当事者だかわからないわけですよ。だから、「変だな」と思ったら、「どうして?」って聞けばいいんだと思います。「だってこうでしょ」って、「ああ、そういうことか、考えもしなかった」って話合えるでしょ。
もしかしたら、せっかくの若い戦力が、そのままニートとか引きこもりになるかもわからないじゃないですか。そういうのを、ちゃんと力として社会が活用し、その人の自己実現もできるわけですから。そこらへんでね、やっぱり先に生まれた世代がもう一歩近寄るっていうことが必要ですね。
便所飯の子なんかでも、近寄って、話を聞いたりしたら、すごくわかりましたもんね。
あるいは切り捨てちゃダメだっていうこと。くっついてみたら、はるかにわれわれよりも優れた力を持っている、それの表現のひとつだった、とかね。その現れに過ぎなかったってことがね、いっぱいあると思うんですよ。それがつかめたときに、うまく新旧がかみ合ってくる。会社の活力も出てくるし、それがポイントだと思いますね。
僕もあきらめそうになったことがありましたよ。「何これ」って(笑)。大学行って授業終わるでしょ。そしたらね、1時間くらい立ち上がれないんですよ。ソファーで転がって、エネルギーが回復するまで待ってから帰りましたよ。その授業の翌日も、ハードなロケなんか入れないようにして。
テレビの仕事はどんなに過酷でも疲れないんですよ。楽しいから。学生のような、見えないものと接しているっていうほど苦しいのはないですよ。これまでは見えてたのに、見えなくなった自分って言うのもやっぱり悔しいしね。
だから皆さんね、会社の先輩とか、特にトップ層とかは驚愕していると思いますけど、あきらめたりは絶対しないでほしい。勇気を出して聞いてみると、きょとんとしながら答えてくれる。そこからつかんでいく。
若者を読み解くキーワードは「身辺化」
原田:教育とはちょっと離れた話になりますが、今の若者のニーズなどから考えられる、マーケティングのヒントになるようなものってありますか。
尾木: “身辺化”っていうはひとつのキーワードになると思うんです。
原田:あ~!
尾木:かつての学生は、探険心、探究心旺盛で、どんどん外に出かけていくという感じだったんですけど、身の回りを固める、身の回りの安定感、心の安定、生活の安定、人間関係の安定、ものすごく欲していますね。そこを強化していく、安心感を与えていくようなメッセージが必要だと思うんですね。
まずそれがあって、グローバルな視点が付加されるっていうのかな。身辺化を固めたら、その後に、グローバルにつながって、国際貢献とか、世界との共生時代を生きていく人材に、自然につながってくるんじゃないかな。
原田:なるほど。本日はありがとうございました。
(編集協力:加藤大貴、空閑悠、矢澤佑紀子、大塚真妃=博報堂ブランドデザイン若者研究所・現場研究員。この対談は2013年4月29日に収録しました)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら