河瀬監督、「日本文化を売り出す人が少ない」 国際映画祭の常連・河瀬直美監督に聞く

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 河瀬直美監督は、1997年に初の劇場映画『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞して以来、作品を発表するごとに世界的に高い評価を集めてきた注目の映像作家。そんな監督の最新作『2つ目の窓』が7月26日より公開されている。本作は日本、フランス、スペインによる合作映画で、早くもフランスでの公開が100館規模で決定しているという。
 これまで故郷の奈良を舞台に数多くの作品を発表してきた監督が、最新作の舞台に選んだのは、自然と神と人間とが共存する奄美大島。この島に暮らす2人の少年少女の初恋と成長を通じて、自然の中で人間の命がつながっていくさまを描き出す。そんな本作を、監督自ら「自分の最高傑作であり、自身のターニングポイント」と位置づけている。
 今回は、故郷の奈良を拠点にしながら、世界を視野に活躍する河瀬監督に、故郷を拠点に活動するメリット、そして世界で渡り合うための仕事術について聞いた。
(撮影:梅谷秀司)
 

自分のルーツ、奄美大島を舞台にした

――河瀬監督といえば、多くの作品を奈良で撮影してきましたが、今回の映画の舞台は奄美大島となっています。

理由として、まずはわたしのルーツが奄美大島にあったということがあります。それから、養母の死に対面したことも大きかったですね。ぬくもりが感じられるようなつながりはなくなってしまいましたが、それでももう1回、自分で再構築してみたいという思い、奄美大島に行ってみようかなと思いました。やはり自分の映画作りというのは、自分の人生と近いところにありますから。よりよく人とつながれる形を模索したかったのです。

奈良には海がなかったので、わたしはずっと海が怖かったのです。でも、自分のご先祖さまが、こんな太平洋側の海沿いの場所に生きていたんだと思うと、自分の中に怖さとしてしかなかった海がすごく身近なものに感じられました。結果的に、世界が広がったような、とてもいい経験となりました。

――今までの作品と比べると、セリフの量が増えて、よりわかりやすい映画になったように思うのですが。

キャストも増えていますし、確かにセリフは増えたと思います。今までだと、もう少しシンプルなキャスティングだったのですが、今回は主人公2人(村上虹郎、吉永淳)と、それぞれの両親(杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子、村上淳)、それから亀爺(常田富士男)という、わりとキャラが立っている人物が7人登場します。彼らにしっかりとしたセリフを言わせるということは、脚本の段階から決めていました。ですから、今回は脚本の時点で、フランスの出資が決まったのです。それが決まったことによって、日本側も決まってきたわけです。

(C)2014“FUTATSUME NO MADO”JFP, CDC, ARTE FC, LM.
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