自分のルーツ、奄美大島を舞台にした
――河瀬監督といえば、多くの作品を奈良で撮影してきましたが、今回の映画の舞台は奄美大島となっています。
理由として、まずはわたしのルーツが奄美大島にあったということがあります。それから、養母の死に対面したことも大きかったですね。ぬくもりが感じられるようなつながりはなくなってしまいましたが、それでももう1回、自分で再構築してみたいという思い、奄美大島に行ってみようかなと思いました。やはり自分の映画作りというのは、自分の人生と近いところにありますから。よりよく人とつながれる形を模索したかったのです。
奈良には海がなかったので、わたしはずっと海が怖かったのです。でも、自分のご先祖さまが、こんな太平洋側の海沿いの場所に生きていたんだと思うと、自分の中に怖さとしてしかなかった海がすごく身近なものに感じられました。結果的に、世界が広がったような、とてもいい経験となりました。
――今までの作品と比べると、セリフの量が増えて、よりわかりやすい映画になったように思うのですが。
キャストも増えていますし、確かにセリフは増えたと思います。今までだと、もう少しシンプルなキャスティングだったのですが、今回は主人公2人(村上虹郎、吉永淳)と、それぞれの両親(杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子、村上淳)、それから亀爺(常田富士男)という、わりとキャラが立っている人物が7人登場します。彼らにしっかりとしたセリフを言わせるということは、脚本の段階から決めていました。ですから、今回は脚本の時点で、フランスの出資が決まったのです。それが決まったことによって、日本側も決まってきたわけです。
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