河瀬監督、「日本文化を売り出す人が少ない」 国際映画祭の常連・河瀬直美監督に聞く

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日本にはプロデューサーが圧倒的に少ない

――河瀬さん自身、世界の映画業界を見てきたと思うのですが、そんな中で日本の映画界はどのように映るのでしょうか?

(撮影:梅谷秀司)

日本は、やはり文化に対する、国の支援金といった意識がとても低いと感じます。ですから、若い子たちや名のない人たちがなかなか世に出にくいですね。無名の子たちがいきなりテレビとのタイアップが取れるわけではないですから。

それからプロデューサーが少ないですね。フランスには私の映画を買って、配給しようとしてくれるプロデューサーがいます。それはスペインやドイツでもそうです。一方で、日本のプロデューサーは、日本の文化を独自のものとして世界に売ろうと考える人は少ないように思います。私は作り手なので、それを自分でやると少しバランスが悪くなる。だから本当にプロデューサーが欲しいんですよ。もうどんどんわたしの映画を売っていってもらいたい(笑)。でも、もう少しすれば、若い世代でもそういった人が出てくるのかもしれないと思って、期待してるんですけど。

――とはいえ、河瀬さん自身のプロデューサー的嗅覚もすごいものがあると思います。今回も(俳優の)村上淳さんと(歌手の)UAさんの息子である村上虹郎さんを主役に抜擢しました。父親役には、実際も父親である村上淳さんを起用し、彼が「なぜ離婚をしたのか?」と問いただすシーンがありました。この虚実入り交じった感覚は、プロデューサーとしてすばらしい仕掛けだと思ったわけですが、そういった、世間にアピールするための視点を意識しているのでしょうか?

一応、そういう意識は持とうと思っています。やはり自分の作家性ばかりを主張していても、それを受け止めてもらえなければ、撮れなくなってしまいますから。そういう中では、やはりパートナーシップを結んだりして、バランスを取らなくてはいけないかなと思っています。妥協と協調ですね。

――妥協というのは主に?

やはりワンマンでやり続けていても、先は見えないですからね。これを妥協というべきなのかどうかはわからないのですが、いかにして、仕事を分散させて、役割をみんなに担ってもらうか、ということは考えます。そうすれば自分だけの力ではないものが働き始めると思うのです。

――どちらかといえば、河瀬さんは人に任せるタイプということでしょうか?

20代のときは自分のやることを完全に把握していないと嫌だったのですが、子どもを産んでからでしょうか。皆に役割を担ってもらって、一緒にやっていくほうが広がるなと思うようになりました。わたしは作家性が強い作品を作るので、ワンマンになりすぎてもいけない。周りの人が意見を言えなくなっても困りますからね。 

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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