河瀬監督、「日本文化を売り出す人が少ない」 国際映画祭の常連・河瀬直美監督に聞く

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河瀬直美(かわせなおみ)
奈良市生まれ。大阪写真(現ビジュアルアーツ)専門学校、映画科卒業。映画表現の原点となったドキュメンタリー『につつまれて』や『かたつもり』で1995年山形国際ドキュメンタリー映画祭国際批評家連盟賞などを受賞。1997年には、初の劇場映画『萌の朱雀』でカンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)を史上最年少で受賞し、鮮烈なデビューを果す。2007年には第60回カンヌ国際映画祭にて『殯の森』がグランプリ(審査員特別賞)を受賞。2013年5月に開催されたカンヌ国際映画祭では、日本人監督として初めて審査員を務めた。2010年から始まった「なら国際映画祭」では、エグゼクティブディレクターとして奔走している。ツイッターアカウント@KawaseNAOMI
公式サイト www.kawasenaomi.com
(撮影:梅谷秀司)

――やはりフランスはダイアローグ(対話)の国だからということもあるのでしょうか?

そうですね。ただセリフだけが立っていたとしても、今までの河瀬直美のト書きの中にあるエモーションのようなものが気になった場合は、「ちょっとこのへんが少ないからもっと書き込んでほしい」といった要望もありました。

――そういった意見から、どんどんブラッシュアップしていくんですね。

そうです。最初からそういったディスカッションをしているので心強いですね。次の作品も一緒にやろうという動きがあります。

――それではわりと近いうちにまた新作が。

出ます(笑)。期待していてください。

――今回は早い段階で出資が決まったという話を聞きました。

ただ、ここまでくるのにだいぶ時間がかかっていますからね。たとえば夏に撮りたいと思ったとしたら、その前の年ぐらいから動き始めなければ、おカネ、キャスト、スケジュールなどは調整できない。わたしもそうやって撮影の前の年から動いたのですが、正直、日本の場合は脚本の内容よりも「俳優さんは誰なの?」「どこが出資するの?」といった感じになりがちですからね。やはり今の日本では、作家のオリジナルの脚本だけを見て判断していただくことはなかなか難しいかもしれません。

ただし今回は、フランスとスペインに半分担ってもらいましたから、リスクが半分になったわけです。そうすれば当面は日本で集めた分だけ回収すればいいということになるので、資金集めがやりやすかったという面はあります。

日本では作品以外の要素で出資が決まる

――海外の会社と一緒に仕事をしてみていかがでしたか?

たとえば今回、ワールドセールスをMK2というフランスの会社に担当してもらったのですが、担当してくれた女性は、学生時代から『沙羅双樹』などを観ていた人で、いつかはわたしと映画を作りたいと思っていたらしいのです。それが現実になったわけで、個人の思いとビジネスとが結び付いていると思いました。彼女はもっと河瀬映画のマーケットを広げられるはずだと見ており、非常に頑張ってくれています。

今回、初めてイギリスにも(配給権が)売れました。さらにアメリカでも公開できるのではないかということで、チャレンジしてくれています。フランスでの公開は10月1日から。全国100館規模で上映することが決定しました。彼女たちのおかげで、ビジネス的なものと、(映画を作る)私の思い、作家性とが、もうひとつ上のランクで花開こうとしている感じです。

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