――やはりフランスはダイアローグ(対話)の国だからということもあるのでしょうか?
そうですね。ただセリフだけが立っていたとしても、今までの河瀬直美のト書きの中にあるエモーションのようなものが気になった場合は、「ちょっとこのへんが少ないからもっと書き込んでほしい」といった要望もありました。
――そういった意見から、どんどんブラッシュアップしていくんですね。
そうです。最初からそういったディスカッションをしているので心強いですね。次の作品も一緒にやろうという動きがあります。
――それではわりと近いうちにまた新作が。
出ます(笑)。期待していてください。
――今回は早い段階で出資が決まったという話を聞きました。
ただ、ここまでくるのにだいぶ時間がかかっていますからね。たとえば夏に撮りたいと思ったとしたら、その前の年ぐらいから動き始めなければ、おカネ、キャスト、スケジュールなどは調整できない。わたしもそうやって撮影の前の年から動いたのですが、正直、日本の場合は脚本の内容よりも「俳優さんは誰なの?」「どこが出資するの?」といった感じになりがちですからね。やはり今の日本では、作家のオリジナルの脚本だけを見て判断していただくことはなかなか難しいかもしれません。
ただし今回は、フランスとスペインに半分担ってもらいましたから、リスクが半分になったわけです。そうすれば当面は日本で集めた分だけ回収すればいいということになるので、資金集めがやりやすかったという面はあります。
日本では作品以外の要素で出資が決まる
――海外の会社と一緒に仕事をしてみていかがでしたか?
たとえば今回、ワールドセールスをMK2というフランスの会社に担当してもらったのですが、担当してくれた女性は、学生時代から『沙羅双樹』などを観ていた人で、いつかはわたしと映画を作りたいと思っていたらしいのです。それが現実になったわけで、個人の思いとビジネスとが結び付いていると思いました。彼女はもっと河瀬映画のマーケットを広げられるはずだと見ており、非常に頑張ってくれています。
今回、初めてイギリスにも(配給権が)売れました。さらにアメリカでも公開できるのではないかということで、チャレンジしてくれています。フランスでの公開は10月1日から。全国100館規模で上映することが決定しました。彼女たちのおかげで、ビジネス的なものと、(映画を作る)私の思い、作家性とが、もうひとつ上のランクで花開こうとしている感じです。
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