「温暖化で沈む国」は本当か?ツバルの意外な内情 沈没説にはどうも政治的な臭いがついて回る

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太平洋戦争が島の運命を大きく変えた。日本軍は真珠湾攻撃の余勢を駆って、近くのギルバート諸島(現キリバス)にまで進軍した。これに対抗するアメリカ軍は、1942年に1088人の海兵隊をフナフティ環礁に上陸させ、湿地を埋め立てわずか5週間で戦闘機が離着陸できる約1500メートルの滑走路を完成させた。

この建設のために島の自然は大きく変わってしまった。かつては、井戸を掘れば真水がわいてきたが、滑走路建設で地下水脈が断ち切られ、島民は雨水に頼って生活するしかなくなった。

滑走路を舗装するコンクリートのために大量の砂が必要になり、フォンガファレ島のいたるところで砂が採掘された。そのときにできた砂の採掘穴は、現在は水たまりやゴミ捨て場になって残っている。

穴は海と直結しているため大潮のときはこの穴を伝って海水が噴き出す。滑走路のあるあたりはもともと低い凹地(くぼち)で標高が1メートルぐらいしかない。大潮のときの海面は最大1.2メートル上昇するために、採掘穴から海水がわき出しやすくなる。

海面上昇より人間の活動による環境汚染が問題

サンゴ礁研究者の茅根創(東京大学理学系研究科教授)はほかの専門研究者らとチームを組み、フナフティ環礁などの実地調査を重ねてきた。その結論として「海水噴出や海岸侵食はほかに原因があり、現状では海面上昇があるにしても影響はごくわずかだ」と論文の中で明らかにしている。

茅根は、「海面上昇よりもむしろ、人間の活動による環境汚染こそが問題」と危機感を抱いている。その危機の1つが有孔虫の減少だ。南海の白砂の大部分は、この有孔虫の殻から形成されている。

この虫は石灰質の殻をもった体長数十ミクロン(髪の毛の太さ程度)から数ミリ程度の単細胞の原生生物。1年で数百に分裂して増えていく。さまざまな形状があるが「星の砂」もこの仲間だ。

ところが、フナフティ環礁では陸上からの排水が流れ込み、水質汚染で有孔虫の数が激減している。茅根は「海面上昇よりもむしろ、有孔虫の減少こそが海岸侵食を深刻にしている主原因だ」と考えている。風や波や海流によって海岸が侵食されていく一方、有孔虫が白砂を補っているからだ。

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