「温暖化で沈む国」は本当か?ツバルの意外な内情 沈没説にはどうも政治的な臭いがついて回る

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ツバルでは2~3月の大潮のとき、海面が上がって島のあちこちで水が噴き出し、低湿地の浸水、民家の床下浸水、道路や畑の冠水などに悩まされてきた。とくにサイクロンが接近すれば大きな被害に見舞われてきた。2015年は大型サイクロン「パム」が南大洋州諸国に甚大な被害をもたらした。

ツバルでも、当時の人口の半数近い4613人が被災し、家屋が倒壊または半壊する被害を受けた。雨水に頼っている島では、各家庭に設置された雨水タンクが命綱だ。それが高波で倒壊して、深刻な水不足に陥った。国民の間では地球温暖化によってサイクロンが大型化したのが原因だとして、温暖化への関心が高まった。

以来、ツバルは前にも増して温暖化外交に力を入れるようになった。温暖化による海面上昇が被害を拡大しているとして、世界に向かってアピールした。温暖化対策のパリ協定に関する条約交渉では、温暖化に対して最も脆弱な国の代表として、大きな役割を果たした。ツバルの歴代の首相は「先進国が化石燃料を浪費して繁栄している陰には、島嶼(とうしょ)国の犠牲がある」と力説してきた。

こうした主張が共感をよび、温暖化対策の名目でさまざまな援助を世界中から受けるようにもなった。この結果、人口ひとりあたり名目GDPは、2002年には2620ドルだったのが、2016年には3640ドル、2019年には4280ドルにもなった。

歳入を増やすために涙ぐましい努力をしてきた

国の財政を支えているのは、海外からの援助と出稼ぎの仕送りが大きい。日本も累計で無償資金協力と技術支援を合わせて約132億円を供与している。この中には、海水の淡水化装置、港湾施設、漁船、病院などが含まれている。

ツバルは、歳入を増やすために涙ぐましい努力をつづけてきた。陸地面積こそ狭いものの、世界で38位の75万平方キロの排他的経済水域を抱えている。日本のマグロ・カツオ漁の重要な漁場であり、ここから入る入漁料も大きな収入源だ。記念切手ビジネスでも有名だ。イギリス王室だけでなく、日本の皇室、歴代のアメリカ大統領、有名スポーツ選手など何でも切手にして、世界に売り出している。

こんな思わぬ収入もあった。国名が英字で「Tuvalu」であることから、ウェブサイトやメールアドレスに使用されるドメインに「.tv」が割り当てられた。日本の場合は「.jp」、アメリカは「.us」である。ドメインは登録業者によって国だけでなく企業などにも販売されている。

TVといえば世界的にテレビの略として通用する。これにインターネット会社が目をつけた。最終的に、米企業が「.tv」を、10年間で総額5000万ドルを支払うことで、独占的に登録する権利をツバルから買い取った。

実際に日本のテレビ局をはじめとして各国で利用されている。ツバルはこのドメインの使用権を売却した収入で、国連や英連邦への加盟を果たすことができた。

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