「温暖化で沈む国」は本当か?ツバルの意外な内情 沈没説にはどうも政治的な臭いがついて回る

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ツバルがメディアで取り上げられるときには、「海面上昇で沈む国」という枕詞がつく。サイクロンのときには、被災者は「環境難民」「気候変動難民」として報道された。

元アメリカ副大統領のアル・ゴアが出版した『不都合な真実』(日本語版2007年)は、その後映画化されアカデミー賞ドキュメンタリー部門でオスカーを受賞した。著作や映画で「沈みつつあるツバル」を地球温暖化の犠牲者として取り上げ、彼は「このまま温暖化が進行すれば海面は将来的に6メートルも上昇する」と主張した。

二酸化炭素増加を監視するアメリカ海洋大気庁(NOAA)も、海面上昇で最初に被害が予想される島嶼国を「温暖化の犠牲者」として取り上げた。ツバルは一躍、温暖化反対のシンボルとなった。

各国からメディアや政治家や芸能人が大挙して島に押し寄せ、「ツバルを救え!」の大合唱が起きた。海面上昇に疑義をはさもうものなら、環境保護団体から「反エコの帝国主義者」のレッテルをはられた。

海面上昇で「なぜツバルだけが沈むのか」という疑問

実際にはどうなっているのか。島に1つしかないホテルのマネジャーにたずねると、部屋がいっぱいになるのは潮位が最も高い大潮のときだけだという。このとき島の各所で水が噴き出すので、欧米のテレビ局がそのシーンを狙って取材にやってくる。

実は、私も島を訪れるまでは、海面上昇でツバルが危機に瀕(ひん)していると信じていた。だが、日本やほかの太平洋の島々で大きな海面上昇はみられず、なぜツバルだけが沈むのかという疑問は抱いていた。

イエレミア首相(当時)に会ってインタビューしたときには、「自分が子どものころに比べて30~50センチも海面が上昇して、大潮のときには街が水浸しになる。こんなことは昔にはなかった」といい、日本がどんな援助をしてくれるのか、しきりに聞きたがった。

ほかにも、環境大臣や国会議員ら多くの島の要人にインタビューした。大臣がゴムサンダルにアロハシャツで現れたのにはびっくりした。「この国は遠からず水没する」という者から、「ほとんど変わっていない」という人まで回答はまちまちだった。

これは2007年以来、島に通って支援活動をつづけている、NPO法人ツバル・オーバービューの河尻京子が「『温暖化で沈む国』―ツバルの現実」として「論座」寄稿した内容と重なる。彼女はツバルで300人ほどの島民に温暖化や海面上昇についてインタビューした。その感想として「漁師らは、子どものころに比べて海面上昇変化を感じると答えたが、ほとんどの人はニュースで聞いた話として認識していた」と語っている。

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1977年以降ツバルの首都フナフティの海面は年平均3.9ミリ上昇していると発表している。島で最も高い標高は海抜4.6メートルしかない。毎年約4ミリ上昇すれば、今後100年で海面水位は40センチも上昇することになり、ツバルに人はほとんど住めなくなる。確かに深刻な事態だ。

だが、海面は潮汐(ちょうせき)、風、大気圧、局所的な重力差、温度、塩分濃度などの影響を受けてつねに変動し、決して「水平」ではない。このことから海面上昇を0.1ミリ単位で見極めるにはかなり困難が伴う。

このために、将来予測も含めてさまざまな海面上昇の数字が発表されて、混乱している。

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