「温暖化で沈む国」は本当か?ツバルの意外な内情 沈没説にはどうも政治的な臭いがついて回る

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地球温暖化による海面上昇の危機にさらされているといわれるツバル(写真:Dmitry Malov/iStock)
地球温暖化問題が論じられるときに、「海に沈む国」としてよく登場するのがツバルです。島で最も高いところでも海抜4.6メートルしかなく、温暖化によって海面が上昇した場合、水没する危険性があるといわれています。その一方で、「海面上昇よりもむしろ、人間の活動による環境汚染こそが問題」という議論や「ツバルは消滅するどころか国土面積が拡大している」と議論もあります。そうしたツバルの実情について、ジャーナリストの石弘之氏が解説します。
※本稿は『砂戦争 知られざる資源争奪戦』から一部抜粋・再構成したものです。

国際空港ビルを出て、バイクの多さに驚いた

ツバルはニュージーランドとハワイのほぼ中間に位置する群島だ。私がツバルを訪れたのは10年あまり前。フィジーから週2便しかないフィジーエアウェイズで2時間ほど、南太平洋のエリス諸島にあるツバルに着いた。空から見た島々は、深い群青色の海に白い小石をばらまいたように見える。

ツバルは9つの環礁からなり、総面積は約26平方キロで東京・品川区よりもひとまわり大きい。世界で4番目に小さいミニ国家だ。その中心が約3平方キロのフナフティ環礁だ。約30のサンゴでできた島がリング状に数珠つなぎになっている。

この中で最も大きい島がフォンガファレ島。ここに首都フナフティがあり、飛行場、政府庁舎、警察署などの機関が集中する。国土の面積は25.9平方キロ。ツバルの全人口1万1000人のうち、6割がフナフティに住む。

こぢんまりした1階建ての国際空港ビルを出てまず驚いたのは、韓国製バイクの多さだ。自動車も思ったよりも多い。島の北端から南端まで約15キロの一本道。バイクで縦断しても20分もかからない。自転車ならわかるが、二酸化炭素の増加による海面上昇を世界に訴えているこの小さな国で、これだけのバイクが必要なのだろうか。

一本道のあちこちに大きなゴミの山ができている。缶詰の缶、ビンやペットボトル、プラスチック製梱包材、日本製のインスタント食品の袋や段ボールなども多い。日用品はほとんどを輸入に頼っているものの、廃棄物を処理するシステムがないためだ。

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