あまりに複雑「ワクチン後の世界」の人付き合い ワクチン派vs反ワクチンだけじゃない対立続出

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サンタモニカの埠頭は、マスクをしていない数千人の観光客でごった返している(写真:筆者撮影)

アメリカでは人口の約半数の48%が新型コロナワクチン接種を完了し、最低1回は接種した大人の割合は7割近くに達した。一見、マスクなしの日常が完全に戻ってきたように見えるが、そんな「ワクチン後の世界」で、「慎重派」と「自由派」の間で何が起きているのか? 現地ルポでお伝えする。

観光地はマスクなしの人で芋洗い状態

「僕たちサンタモニカの埠頭に着いたけど、いま、会えるかな?」

6月末の平日の夕方、中西部に住む友人の息子から電話があった。学校が夏休みでカリフォルニアに観光に来たと言う。すぐに海沿いのサンタモニカの埠頭に向かうと、目の前の光景に驚愕した。マスクをしていない数千人の観光客が、観覧車やジェットコースターのある狭い埠頭でごったがえし、芋洗い状態になっている。

海を目の前に興奮して大声ではしゃぐ大群衆の観光客たち。屋外とは言え、至近距離で飛沫が四方八方から飛んでくる。

こ、怖い――。反射的に慌てて鞄の中からマスクを出してつける。見回すと、数千人の大群衆の中、マスクをつけている人は筆者を含め数人だけだ。

アメリカのCDC(疾病対策センター)は今年5月13日に「新型コロナのワクチン接種を完了した人は、室内でも屋外でもマスク着用不要」と宣言。そこからアメリカはマスクなしの日常に突入し、2カ月が経過した。だが、ロサンゼルス郡では今も1日当たり500~1000人の感染者が出ており、非常事態宣言が出された東京と日々の感染者数はそれほど変わらないのだ。

筆者は、モデルナ・ワクチン接種の2回目を5月初旬に済ませたので、すでに体内に抗体ができているはずだ。だが、この近距離で、もしデルタ株の飛沫を直接浴びてしまったらと考えると、身体がこわばる。接種完了後でも、ウイルスに絶対に感染しないわけではないからだ。

待ち合わせた友人の息子とその友達は、6月の段階で国内線の飛行機に乗って旅行し、大混雑する観光地を訪れることに抵抗がない若い学生たちだ。体育会ボート部の練習で毎日鍛えている彼らは、自らの免疫力に1ミリの不安もないようで、大群衆の中でもマスクなしで白い歯全開で笑っている。

彼ら2人がジョンソン・アンド・ジョンソンのワクチンを受けたことを事前に聞いていたので、お互いハグすることに躊躇はなかったが、それでも少し緊張した。

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