あまりに複雑「ワクチン後の世界」の人付き合い ワクチン派vs反ワクチンだけじゃない対立続出
カリフォルニアの多くの州立・公立大学は、この秋学期から、全学生にワクチン接種を義務づけると発表している。資金が潤沢な東海岸のアイビーリーグの有名大学なども軒並み学生に接種を義務づけた。
「接種を義務化できるカリフォルニアの大学がうらやましい」と語るのは、アラスカ州にある大学の教員のA氏だ。「うちの大学は万年資金不足。だから、未接種の学生を拒否したら大学経営が成り立たない。もっとリベラルな州だったら義務化を強行できたんだろうけど」。
トランプ票が多かった州は接種率が低い
ちなみに、各州の新型コロナワクチン接種率は、2020年の大統領選の投票傾向と酷似しており、一般的にバイデン票が多かった州は接種率が高く、トランプ票が多かった州は接種率が低い。
共和党が常勝のアラスカ州の接種完了率は44%にとどまった。特に若者の接種率が低いのが特徴だ。対して同州のすぐ隣のワシントン州の都市シアトルは最低1回は接種した住民の比率が78%に達したと発表し、「うちは全米で最速で住民の7割が接種完了した大都市だ」とシアトル市長が豪語している。
「民主党が強いカリフォルニアに住むトランプ支持者の大学生がワクチン接種を拒否して、この秋、アラスカのキャンパスにどっと流れて転校して来るのかな?」とA氏はジョークめかして言う。
自らを「慎重派」と言う彼は、今年4月初めには2度目のモデルナ・ワクチン接種を終えているが、夏休み中に州外へ旅行する予定はない。A氏の大学は9月から対面授業を再開する予定だが、未接種の学生が多い場合は「オンライン授業のままのほうが安全だろうな」とA氏は本音を漏らした。
「ワクチン後の世界」では、接種をするかしないか、接種するならいつするか、マスクを着用するか、しないかなど、「ここまでの行動なら安心」というレベルが個人によって大きく異なる。
それは単純に「分断」という手垢のついた言葉で形容できない複雑な状況だ。職場や家族や友人間でも個々の「安心」レベルが違うため、きしみや葛藤がミクロなレベルでつねに起きる。
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