あまりに複雑「ワクチン後の世界」の人付き合い ワクチン派vs反ワクチンだけじゃない対立続出

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飲食店内でのマスク論争には、カリフォルニア州の労働安全衛生局(CAL/OSHA)が、「ワクチン接種を完了した従業員は、職場でマスクを着用しなくてもよい」という決定を6月半ばに出した。その結果、同じレストランの中で、マスクを着用する店員と、マスクなしの店員が共存するという複雑な状況が生まれている。

マスクなしのウェイター(写真:筆者撮影)

料理を運ぶウェイターがマスクなしで客に話しかける光景を初めて筆者が見たときは、ギョッとした。これまでマスク生活に完全に慣れていたため、店員の口元が見える姿が視覚的にショッキングに映るのだ。しかし、よく見ると給仕されている客はまったく動揺しておらず、笑顔で接しているではないか。

マスクなしのウェイターは「接種完了済み」ということになるのだが、本当に接種済みなのかは、客には知るすべがない。また、マスクを着用するウェイターたちの中には、接種済みと未接種の両者がいる。そして誰がどちらなのかは、客にはわからない。この複雑な状態を許容できないうちは、「ワクチン後の世界」で外食を心から楽しむことは心理的に難しいと言える。

「ワクチン未接種者入店お断り」の店も登場

可視化するために、ワクチン接種者が「接種済み」ステッカーを自発的にシャツに貼り付けたらどうか、というアイデアもちまたではあるが、前述のケレンさんはそれには反対だ。「接種済みの人だけが目印をつけると、必然的に印をつけていない未接種者の私たちが、二級市民として扱われて、差別されてしまう恐れがある」と言う。

そんな中「ワクチン未接種者入店お断り」という看板を堂々と店頭に掲げたブティックがある。州内のニューポート・ビーチにある、グッチなどのブランド商品や洋服を売る店「ボヘミア」だ。接種済み証明書を提示した客だけのアポを受け付けて彼らを店内に入れており、店内に入ればマスク着用の必要はない。

この店の方針が地元テレビ局のニュースで報道されると「ワクチン接種の有無で客を差別するなんてひどい」という星1つの酷評が、ネットの評価サイトにずらっと並んだ。

店のオーナーを取材しようと電話をすると「留守電はセットされていません」という機械音声が流れ、電話が自動的に切れた。店のサイトにもメールアドレス記載が一切ないため連絡が取れない。何者かによる店への脅迫事件が起きたため、店側が警戒している様子がヒシヒシと伝わってきた。

ちなみに店が客に接種証明書の提示を求め、未接種者を拒む行為は、法律違反ではなく合法だ。

ほかにも「ワクチン接種者以外お断り」のポリシーを持つ組織がある。その筆頭が大学だ。

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