あまりに複雑「ワクチン後の世界」の人付き合い ワクチン派vs反ワクチンだけじゃない対立続出

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「2度目の接種が完了した瞬間、妻と思わず万歳したよ」。リタイア生活中のゴスさんは、昨年のロックダウン中はほとんど外に出ずに過ごした。少しでも喉の様子がおかしいなと思えば、夫婦で検査場に行き、PCR検査を受けて陰性を確認した。接種済みの娘夫婦を自宅に招いて会食したのも、今年6月になってからだ。

この夏は妻と2人で国立公園などに旅行に行く予定だ。州が発行するワククチン接種証明書のデジタル版をスマホにすでにダウンロード済みで、いつでも提示できるように準備した。感染の危険がある飛行機や空港は使う気はなく、ロードトリップの足として、中古のSUVをネットのオークションで購入した。

「旅行中、泊めてもらうのは、ワクチン接種済みの友人たちの家だけ」と言う。つまり、友人の中でもワクチン接種済みの人とだけ対面で交流し、不特定多数の人が使う公共交通機関は、配車サービスのウーバーやレンタカーを含めて一切使わない。それが、慎重派を自認するゴスさんが「ここまでならOKだ」と感じられるコンフォートゾーンなのだ。

「現時点で、アメリカでは薬局やスーパーでまったく待たずにコロナワクチン接種をできるようになった。この状況でいまだに接種しないような人とは、個人的な付き合いは遠慮したいね」と彼は言う。

「マスクをしているウェイターがいや」

一方、ロス在住の40代の高校教師ケレンさんの家庭では、「ワクチン接種派」と「ワクチン拒否派」がひとつ屋根の下で共存している。「自分の身体の中にワクチンという異物を入れたくない。どんな影響があるかわからないから。他人が接種するのは自由だけど、私に接種を強要しないでほしい」と語るケレンさん。

彼女と13歳の息子、さらに70代の両親の4人暮らし。同居家族の中でワクチン接種をしたのは、彼女の父親1人だ。

「父はワクチン接種後も感染を極度に恐れていて、スーパーに買い物に行った後は、着ていた服をすぐ脱いでビニール袋に入れ、数日経ってから洗濯するほど。いったい何のためにワクチンを受けたのかと苦笑してしまう。接種した本人が、実はワクチンの有効性をいちばん信じていないんじゃないかと思う」

レストランではマスクをしているウェイターとマスクをしていないウェイターが混在している(写真:筆者撮影)

彼女が勤務する高校の教室内ではマスク着用が義務づけられているため、学校内では必ずマスクをしている。だが、学校外でのプライベートの時間には、マスク使用は最小限にしているという。

「チーズケーキの店で伯母の誕生日を祝ったけど、マスクを着用しているウェイターに給仕されて強烈に不快だった。彼は無意識に指でマスクを触って位置を調整し、その手で料理を運んでいたから。私は、マスクをしていないウェイターのほうがよっぽど安心できる」とケレンさんは言う。

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