あまりに複雑「ワクチン後の世界」の人付き合い ワクチン派vs反ワクチンだけじゃない対立続出

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「ワクチン接種が終わったからもうすべて自由だ」という自由派と「ここまで用心してきたんだから、ワクチン接種後も気をつけたい」という慎重派が、同じ空間で共存を迫られる場面が日常茶飯事なのだ。また、時間が経つにつれ、「慎重派」が少しずつ「自由派」へと変容していく場合も見られ、固定的ではなく流動的な面もある。

アジア系住民へのヘイト犯罪が多発し、ロスでの抗議デモを現場で取材していたとき、デモ参加者の1人、アメリカの航空会社で客室乗務員として働くミミ・ファングさんに出会った。ファングさんは2回目のワクチン接種を受けた3月末の日にその足で抗議デモに参加し、木陰で休んでいた。

右が室乗務員として働くファングさん(写真:筆者撮影)

アジアやアメリカ内を就航する飛行機の中で働く彼女は、昨年から今年にかけ、コロナ禍の中国に到着し、最も厳格な隔離を身をもって体験した翌週に、アメリカのテキサス州に飛び、街でほとんど誰もマスクをしていないという状況を体験してきた。

両極の状態を何度も体験するうち、周囲がどんな状況でも自信を持って対処するには、ワクチン接種を完了する以外にはない、と確信したと言う。客室乗務員である彼女は、職業柄エッセンシャル・ワーカー枠で、比較的早めにワクチン接種予約の順番が回ってきたが、ワクチン予約争奪戦には苦労したと語る。

多くの人からワクチン接種を勧められたが…

彼女は筆者に「ジャーナリストとして現場取材しているなら、1秒でも早くワクチンを打つべき。零時以降の真夜中に予約サイトにアクセスすれば、空いている枠が見つけやすいから」とコツを教えてくれた。

実際に、筆者がヘイト犯罪現場や、大規模デモや、ロスの警察署のオフィスに取材に行くたびに、早くワクチンを接種したほうがいいと周囲の人から何度も勧められた。

高齢者や医療従事者や基礎疾患がある人、さらに介護、交通、販売、保育、学校教育などの分野に従事するエッセンシャル・ワーカーの接種があくまで最優先で、自分はまだだと待っていたが、気づくと自分より若い記者仲間が、「ワクチンファインダー」などのサイトを駆使して予約の空き枠を探し当て、とっくに1回目を接種済みだった。いつしか予約争奪戦に完全に出遅れていたことに気づき焦る。

やっと取れた予約は、4月3日枠で、ロスの治安の悪い地域にあるドライブスルー接種会場。奇しくも当日は全米で400万人が接種した最大記録達成の日だった。

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