佐戸記者と仕事をしたことがある報道局のディレクターは、職員たちがかかえる葛藤について筆者にこう話してくれた。
「組織に楯突くつもりは全くないのに、そう思われてしまう恐怖。同期の人が未和さんについて話すことをためらう必要なんてないのに、ためらってしまうのはそういうことですよね。結局、私を含めて、みんなが少しずつ責任放棄することでこうなってしまった」
きちんとけじめをつけるには
佐戸記者のことにきちんとけじめをつけるには、どうすればいいだろうか。NHKで働く者の一人として思うのは、特集番組『未和』を制作し、放送することだ。
それは単なる検証番組ではなく、過労死問題に限定した番組でもなく、彼女に想いを寄せる職員1人ひとりが、レンズの向こうの未和さんに向かって語りかける番組であってほしいと願っている。
そのような番組を作る取り組みによってこそ、組織としてのNHKが決して明かさない当時の状況を遺族に伝えることができるだろう。そして、生まれ変わったNHKの姿を未和さんに見せることができるだろう。
佐戸記者の婚約者は7回忌の閉会挨拶で、涙をこらえてこう語った。
「いつも笑顔で私を迎えてくれた未和が、あの日だけは違いました。もっと早く迎えに行ってあげれば助かったんじゃないか。救ってあげられたんじゃないかと今でも後悔しています」
今年も佐戸記者の命日がやってくる。
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