女性記者過労死後、NHKで進む「働き方改革」の真実

問われる「社会の木鐸としてのNHK」のスタンス

5回にわたって掲載してきた映画『未和』のエンディングで引用した、〈あなたの死について私は何ひとつ納得していません〉という同僚の言葉。佐戸記者の死の1年後、NHKの有志が制作した追悼文集の一節だ。原文はこうだった。

〈あなたの死についても、4年前の冬に亡くなった○○記者の死についても、私は何ひとつ納得していません〉

未和さんのほかにも、若くして死を遂げた記者がいるというのだ。

別の職員も、重要な証言をしてくれた。彼は、佐戸記者の命を奪った参院選取材の3年前、同じ参院選の業務中に体調を崩した。その後、精神に重度の障害が発症したとの診断が下り、労災申請をすることにした。対応した労基署職員の発言は驚くべきものだった。

「あなたNHKの正職員ですよね。労災申請する職員なんて聞いたことないですよ。NHKで働いていけますか」

もし彼の訴えに会社が真剣に耳を傾け、働き方改革を少しでも進めていたら、佐戸記者の命も救われたのではないか。筆者にはそう感じられてならない。

NHK職員の勉強会で、遺族が語ったこと

6月25日、NHKの労働組合・日放労の記者、ディレクター、アナウンサーなどで構成される組織「放送系列」が、「過労死を風化させないために」と題する勉強会を行った。当初昨年11月に開催予定だったが、準備の過程で異論が出て、延期されていた。

勉強会には佐戸記者の遺族がゲストとして招かれた。父の守さんは70人ほどの職員に向かって、最後にこう語りかけた。

「NHKは未和の過労死のことは局内だけに留めておいて、外の目には触れさせたくない、早く世間から忘れてほしい、と。そう思っているようにしか見えないのです。それが社会の木鐸としてのNHKのスタンスですか? それで本当にいいんですか、と私たちはいつも思っています。NHKはメディアだからこそ、何を報道して何を報道しないか自分で決めることができるわけです。未和の過労死についてこのままでいいのかということを、もっと真剣に考えてほしいです」

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