女性記者過労死後、NHKで進む「働き方改革」の真実 問われる「社会の木鐸としてのNHK」のスタンス

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現時点の職員の声を拾ってみると、「外部パワーが皆無の地方では、あらゆる業務を職員がこなさねばならず、まだまだ大変」などの意見もある。しかし、「休日の取得は容易になった」「連日徹夜が続くということはなくなった」など、改善を実感する声が多い。

他方、若手職員からは、働き方改革による業務の大きな変化に戸惑う声も聞かれる。

たとえば、入局3〜4年目の職員の場合。ある平日夜に放送の30分番組を、3カ月半から4カ月もの長期間をかけて作るのが通常になり、経験が前ほど積めないと焦りの声も聞かれる。いずれ民放のように、正職員は外部の制作会社が作った番組の品質管理に徹し、取材ができなくなるのでは、との危機感を語る現場管理職もいる。

記者職では、スマートフォンのGPS機能を使った勤務管理が始まった。勤務時間の削減で年収が100万円程減った記者も少なくない。

24時間働ける「外部」スタッフ

こうして正規職員の働き方が変わる一方、番組制作に関わる多数の外部スタッフの働き方はどうなったのか。

NHK放送センター周辺のビルにずらりと並ぶレンタル業者の編集室。その入り口には、クライアントであるNHKのレギュラー番組名と利用時間が記されている。

〈○○様 9:00〜33:00〉
〈□□様 9:00〜33:00〉
〈△△様 9:00〜33:00〉

 

33時とは朝9時のこと。文字通り24時間、“外部スタッフ”は、誰にとがめられることもなく働くことができる。

午前はスタジオでA番組の仕上げ。午後はB番組の打ち合わせや取材。夕方頃編集室に戻り、編集マンがつないだC番組の映像に合わせて、ナレーションを書いたりCGを発注したりする。そのまま編集室で数時間仮眠して、再び同じような1日が始まる。過労の限りを尽くしてきたベテラン編集マンが、脳出血などで倒れるケースも見られる。

NHKが言う働き方改革とは、結局「正職員」だけのものなのか。「NHK全体」の働き方改革が進んだといえるのか。

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