一般人が「天才のまね」しても成果出ない根本理由 ジョブズやバフェットに対するよくある誤解

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その理由は、ヒーローが活躍するストーリーを私たちが聞きたくてたまらないからだ。最高のストーリーは、いかにもヒーローらしいキャラクターが登場するストーリーだ。私たちは、すべての結果はその人がもたらしたと考え、ほかのプレーヤーが果たした役割を軽く見る。

また、そのときの環境や競争相手や「運」の影響(よいか悪いかにかかわらず)も過小評価する。

あなたがある人を天才だと感じたら、その人のまねをする前に、よく考える必要がある。「スティーブ・ジョブズは天才だった」と言い、「だから模倣すべきだ」と結論づけるとき、あなたは三段論法の2番目の前提を忘れている。それは「私も天才だ」である。

自動車レースの最高峰フォーミュラワン(F1)の王者は運転の魔術師だが、普段ハンドルを握っているときのあなたは、F1王者の「ベストプラクティス」をまねようとは夢にも思わないだろう。それができるのは魔術師だけとわかっているからだ。運転に関して、人は魔術師と自分の違いをよくわきまえているが、「ビジネスの魔術師」について話すときには、しばしばその自覚が抜け落ちる。

バフェットから学んでも市場では勝てない

例として、投資の魔術師ウォーレン・バフェットを取り上げよう。バフェットは半世紀にわたって卓越した業績をあげ、2020年の純資産は800億ドルを超え、世界で3番目に裕福な人になった。多くの投資家がバフェットの投資戦略を研究している。それは彼の戦略がシンプルに見え、また、彼がそれを庶民的で実用的な言葉で語るからだ。

「自分がよく知ることから離れない。バブルにつながる一時的な流行や方法に気をつけよう。価値が上がる可能性がある資産は、10年、20年、あるいは30年保有することをためらうな。過剰に分散投資をしない」

バフェットが率いる世界最大の投資持ち株会社バークシャー・ハサウェイは、毎年5月にアメリカ・ネブラスカ州オマハで株主総会を開く。そこには数万人の同社の株主が、「オマハの神託」を聞くために「巡礼」する。バフェットの投資原則を学んで、自ら実践するためだ。しかし、市場に戦いを挑んでも決して勝てないことを、山のような証拠が示している。

オマハへの巡礼者の中に、バフェットの実績に近づきそうな者はいない。実際、バフェット自身がそうした挑戦を戒めている。この賢者は、資産運用会社は手数料に見合う働きをしているだろうかと疑い、個人投資家にはインデックスファンドの購入を勧める。ほかの分野と同じく、投資の世界に天才がいるのであれば、当然ながらそれは例外的存在だ。

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