一般人が「天才のまね」しても成果出ない根本理由 ジョブズやバフェットに対するよくある誤解

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私たちは天才をまねしようとすべきではない。なぜなら、天才と同じような業績をあげることは不可能だからだ。言うまでもなく、これは私たちが聞きたいメッセージではない!

人には自分の能力を過大評価する傾向があり、天才のまねをしたいという熱い想いはそれによって増幅される。私たちは、どんな理屈や統計的証拠を示されても、自分は例外かもしれないと思ってしまう。

結局のところ、スティーブ・ジョブズ、ジャック・ウェルチ、ウォーレン・バフェットが、こうした警告を胸に刻んでいたら、信じがたいほどの成功を収めていただろうか。

こうした人々の存在こそが、十分な才能と意欲さえあれば、誰でも並外れた成果を残せるという確かな証拠ではないのか。印象に残っているアップルの広告コピー「自分が世界を変えられると考えるくらいクレイジーな人たちこそが、本当に世界を変えているのだから」は、真実ではないのか。

もちろん、そのとおりだ。そして、もし私たちがインスピレーションを探すのであれば、間違いなくこれらの非凡な人物たちの中にそれを見つけるだろう。しかし、実践的な教えを期待すると、深刻な「推論の誤り」を犯すことになる。

生存者にしか目を向けない論理的エラー

私たちが憧れるモデルは、もちろん成功したモデルだ。しかし「自分が世界を変えられると考えるくらいクレイジーな人たち」の圧倒的多数は、世界を変えることは「なかった」。

『賢い人がなぜ決断を誤るのか?』(日経BP)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

私たちはその人たちが世界を変えた話を聞いたことがない。そのことを忘れてしまうのは、勝者だけを見ようとするからだ。

私たちは生存者にしか目を向けず、同じリスクに挑んで行動した結果、失敗した者には、目を向けようとしない。この論理的エラーは「生存者バイアス」と呼ばれる。

生存者だけで構成されるサンプルからは、教訓を引き出すべきではない。それでも私たちがそうするのは、生存者しか見えないからだ。

モデルの探求は私たちを勇気づけるが、道を迷わせる原因にもなる。英雄と自分を重ね合わせたい欲望を抑え、世界中の人が憧れる数少ない偉人ではなく、華々しい成功を収めてはいないが自分によく似た意思決定者から学ぶほうが、恩恵を得られるだろう。

オリヴィエ・シボニー フランスHEC経営大学院教授

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Olivier Sibony

25年にわたって、パリとニューヨークでマッキンゼー・アンド・カンパニーのシニア・パートナーを務めた。戦略的意思決定の質の向上について研究し、その成果は、ハーバード・ビジネス・レビュー、MITスローン・マネジメント・レビューなどで発表されている。HEC経営大学院卒業、PSL研究大学でPhD

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