「災害後の突然の不調」に悩む人へ伝えたい対処法 被災者だけでなくニュースを見て体調崩す人も

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ストレス反応自体は生物として自然ですが、これらは精神面だけでなく身体面にも影響を与えるため、結果的にさまざまな不調を引き起こします。

たとえば、動悸(どうき)、過呼吸、発汗、フラッシュバック、幻覚、耳鳴り、抑うつ、不安焦燥感、不眠、悪夢、イライラ、集中力の低下、めまい、疲れやすさ、食欲低下、肥満、下痢・便秘、頭痛、全身倦怠感、冷え、肩凝り、アレルギー症状の悪化、エコノミークラス症候群などです。

中には、災害時のストレスが一種のトラウマとなり、長期間にわたり苦痛を及ぼすケースも見られます。フラッシュバック(PTSD)、適応障害、うつ病、アルコール関連障害(依存症、肝疾患)、喫煙関連(依存症、COPD、肺がん)などです。

災害後にこうした症状が起こったとき、明らかな診断名が付く場合は、治療方法も見つかります。重症・軽症の違いはありますが、治療法がわかることで、患者さんは次の一歩を踏み出しやすくなります。一方で、検査結果には異常が見られないのに、本人にとっては明らかに不調・不快であるケースもあります。医学的に説明できない諸症状のことです。

典型的なのは、近所のクリニックに行って苦痛を訴えても、「原因がはっきりしないので大きな病院に行ってください」と紹介状を渡されるようなケースです。実際に大学病院などに行ってさまざまな検査を受けるのですが、「異常はありません」と言われてしまいます。結果的に、不調を抱えたままドクターショッピング(診察に納得がいかず医療機関を次々に変えること)を続けざるをえない患者さんが生まれます。

大学病院や救急医療などをおこなう大きな病院は、緊急処置を要する病気、または重要・重大な病気への治療が最優先されます。具体的には事故によるけがや、心筋梗塞、脳血管疾患、がんなどいわゆる「大病」と言われる病気です。そのため、検査で異常が認められない患者さんが大病院で診てもらえないのは、現在の医療システム上、致し方ない面もあります。

災害不調と関わりが大きい「自律神経失調症」

緊急や重要ではないかもしれませんが、本人にとっては深刻です。私のもとには、そのような患者さんが、まさにわらをにもすがる思いでやってきます。めまいや耳鳴り、体の痛み……原因もわからないまま、しょっちゅうそれらの症状が出ていたらどうでしょうか。健康的な日常生活を送ることはできませんし、それが長引けば不安が募って精神疾患を発症することもあります。実際、患者さんはとても苦しんでいます。

「災害不調」の「不調」とは、このような不調を指します。ひと言で言うなら、「災害後に起こる、診断がつかない不調」といえます。「災害不調」とは耳慣れない言葉かもしれませんが、それもそのはずで、最近、多くの患者さんを見る中で、私が考えた言葉です。

「災害不調」と関わりが大きいのが、いわゆる「自律神経失調症」です。不安、不眠、頭痛などの診断のつかない症状があり、大病院に行っても原因がわからず、心療内科に行って薬を何種類も処方されて服用しても改善しない……。このような状態が「自律神経失調症」です。私自身、自律神経失調症で苦しむ患者さんと接する機会はとても多いです。

災害は、自律神経失調症による不調・苦痛が表面化する大きなきっかけになります。「自律神経失調症」と言ってぴんとこなくても、災害を体験したことがあれば「災害後に味わった、ああいういろいろな不調のことか……」と気づく方も多いかもしれません。

実際に経験していなくても、災害の様子をニュースなどで見聞きすることで症状が表れる方もいます。新型コロナウイルスの流行では、ご自身が感染していなくても、不調を訴える患者さんが多く来院されました。

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