映画や音楽などエンターテインメントの世界進出で日本の先を行く韓国。早くからグローバルを視野に入れてきた韓国映画界の第一線で活躍中の女優コ・アソンは、アメリカ・アカデミー賞を受賞したポン・ジュノ監督の『グエムル-漢江の怪物-』(2006年)で映画デビューした。さらに同監督が手がけたハリウッド大作『スノーピアサー』(2013年)でヒロインを演じるなど、その演技力とともに世界での活動実績がさらなる飛躍への期待を集める実力派女優だ。
そんなコ・アソンの主演最新作『サムジンカンパニー1995』(7月9日公開)は、韓国社会の節目である1990年代が舞台だ。学歴社会を地で行く大企業に入社した高卒女性社員が、さまざまな壁や葛藤を乗り越えながら自分の正義を貫く姿を描いた作品。実話がもとになっており、韓国でもっとも権威ある『第57回百想芸術大賞』で映画部門・作品賞を受賞した。
いまや世界にその名を轟かす韓国エンタメシーンの真っ只中で活躍するコ・アソンに、昨今の#MeToo運動とは正反対の男女格差が当たり前だった1990年代を生きる女性を演じて感じたこと、世界を視野に入れる韓国芸能界での俳優活動について聞いた。
男女格差が大きかった90年代韓国社会への意識
――映画で描かれるのは、高卒の女性は、男性の補佐的な仕事しかさせてもらえないのが当たり前だった頃。そういう時代に生きる女性を演じて思うことはありましたか。
この映画の冒頭に、主人公が男性社員から雑用を押し付けられるシーンがあります。デスクの掃除やコーヒーをいれたりするのですが、それだけであれば1990年代の女性の働き方の時代考証で終わっていたと思います。でも、そこから一歩踏み込んだセリフがあるんです。
それは、その男性社員に対する上司の「どうして自分の仕事を他人にやらせるんだ」という言葉。その時代の社会を映すだけではなく、それをおかしいことだとメッセージとして伝えているんです。多くの観客がこのシーンで笑ったそうですが、私を含め現代女性の誰もがこの上司のように感じたと思います。このシーンがあって、時代考証以上に制作側のマインドが強く反映されていることに気づきました。
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