「オリンピック開催」に突き進ませる6つの数字 中止の損害も、メンツにこだわるリスクも膨大
東京五輪が開催されなかった場合、大会を組織・運営する国際五輪委員会(IOC)はこれだけのテレビ放映権料を返金しなければならなくなる可能性がある。IOCの収入の73%に相当する額だ。さらに数億ドルにのぼるスポンサー料についても、協賛企業から返還を求められる可能性がある。
アメリカにおける夏季五輪のテレビ放映権は、世界のスポーツイベントの中でも特に高額な権利だが、もたらされる利益も極めて大きい。莫大な広告収入が生まれるためだ。
アメリカで五輪の放映権を持つNBCユニバーサルは2020年3月、東京大会の広告枠として12億5000万ドルを売り上げたと発表している。その額は2016年のリオデジャネイロ大会をすでに上回る。リオ大会は総額で16億2000万ドルの売り上げと2億5000万ドルの利益を同社にもたらした。
東京大会は1年延期されたが、NBCの業績に打撃が生じているわけではなさそうだ。NBCユニバーサルの最高経営責任者(CEO)ジェフ・シェルは6月半ばの投資家向けイベントで、東京大会は視聴率次第では「当社の歴史で最大の利益をもたらしてくれる五輪となる可能性がある」と語った。
「連帯」という名の重い負担
IOCの最新の年次報告書には「ソリダリティー(連帯)」という言葉が406回も出てくる。中でも目立つのは、ソリダリティー基金として各国の五輪委員会に分配される5億4900万ドルへの言及だ(各委員会に対する分配金の内訳は、IOCの報告書には出ていない)。
運営費から競技者育成プログラムの支出に至るまで、IOCからの分配金が資金的な生命線となっている五輪委員会は少なくない。例えば、IOCの元委員リチャード・ピーターキンによると、カリブ海の島国セントルシアの五輪委員会の年間収入60万ドルの4分の1はIOCが拠出している。
主要国の五輪委員会もIOCに資金を頼っている。イギリス五輪委員会は最新の年次報告書で、東京大会が中止になれば資金繰りが行き詰まるおそれがあるとの見通しを示した。「2021年5月以降に五輪が中止となった場合には、継続企業の前提に重大な疑義を生じさせうる重大な不確実性が生じる」と同委員会の理事たちは結論づけている。
東京大会の延期によって、200以上の国と地域を代表する1万1100人のオリンピック選手と4400人のパラリンピック選手の人生がすでに1年間保留となっている。