アメリカ「高層マンション崩壊」はなぜ起きたのか 2018年の調査では構造的な問題指摘されていた
しかしほかの構造エンジニアたちによると、あるレベルの腐食は古い建物では普通のことであり、建物が自重で崩落する原因となるのは考えにくいという。
決定的な手がかりは今も不明だが、「手がかりはおそらく崩落が始まったと思われる部分のがれきの下で見つかることになるだろう」とベンツ氏は言う。
この建物の構造全体にわたって使用されているのは、大半が強化コンクリートだった。つまり、このマンション全体がのっていた床版はコンクリート製で、これはリーバー(頑強な鋼棒)周辺に水平方向にコンクリートを流し込んで乾かし、限界強度を持たせたものだ。同様に、コンクリートスラブを支えていた支柱も、リーバー周辺に垂直方向にコンクリートを流し込んで造られたものだ。
建物付近の沿岸は年に2㎝ずつ沈下
スラブと支柱との接合点で崩壊が起きたのだとすれば、2018年の報告書にあるスラブ内のリーバーの腐食が重大な要因だと思われる、とデューゼンベリー氏は言う。その接合点で腐食が起こると、支柱の接続が弱体化し、崩落を引き起こす可能性があるという。
強化コンクリートのがれきの層を見ても同じことが考えられる。建物全体を支えていた垂直方向のサポートがそのがれきの山の下深く埋まっている、とデイヴィス・ペラザ氏は言う。同氏は工学・科学系コンサルティング会社エクスポネントの構造エンジニアだ。
以前報告された学術研究によると、この建物のある地域の沿岸は、年に2cmの割合で沈下を続けているという。しかし深層まで打ち込まれた杭によって安定を保っていた、とペラザ氏は言う。
唯一危険な状態となりうるのは、空洞または陥没穴のようなものが存在しており、それによって一部の杭が沈下、ほかの杭はそのままといった状態になっていた場合だ。そうした状態になっていれば、それらの杭──つまり地下駐車場の支柱──の上に乗っている構造を脅かしていた可能性がある。
「建物の下に崩落の引き金となったなんらかの地質学的要因があったのかどうか、それについては間違いなく調査されることになるだろう」とペラザ氏は言う。
もう1つの可能性としては、不適切な杭の設置が考えられる、と同氏は言う。
考えられる最後の理論としては、すぐ隣で行われた2019年の大がかりな建設工事がシャンプレイン・タワーズにダメージを及ぼしたという可能性だ。6月27日の市当局からのメールによると、当マンション管理組合の理事の1人が、当時「われわれの建物の構造に関する懸念」に言及して市に助けを求めていたことがわかった。