アメリカ「高層マンション崩壊」はなぜ起きたのか 2018年の調査では構造的な問題指摘されていた

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建物の下部で初期の故障が発生した原因には、建物の基礎に深く打ち付けられた鉄筋コンクリート杭の欠陥が関与している可能性がある。おそらくその下にあった未発見の空洞や陥没孔が引き金となって、欠陥が表面化し、下層部の柱の破損につながったのである。

あるいは、駐車場や最初の数階の柱を補強している鉄が腐食していて、どうにかして自壊してしまったのかもしれない。または、建物自体の設計が不適切で、標準以下のコンクリートやスチールを使って建てられたか、あるいは単に重要な箇所のスチールが不足していたのかもしれない。

トロント大学のエバン・ベンツ教授(構造工学)は、これまでのところ最良の手がかりは映像と単純な推論から得られたと言う。彼は地下駐車場の支柱に疑いの目を向けている。

「地下駐車場の柱の主な目的は、構造物を空中に保持することだが」と彼は言う。「構造物が空中で支えられなくなったのだから、最も単純な説明は、地下の柱が機能しなくなったということだ」。

2年半前に構造的問題の指摘を受けていた

アメリカにおける大型ビルの崩落は極めて異例であり、謎を深めている。とくにこのシャンプレイン・タワーズ・サウスは、40年間普通に建っており、先日その大半の部分が完璧に崩落するまでは何の問題も見られなかったのだ。エンジニアたちはそう首をかしげる。

「40年間建っていて、それがある日突然崩落した」とグレン・R・ベル氏。同氏はアメリカ土木学会構造工学研究所内の「より安全な構造のための共同報告」のディレクターを務める。「あの瞬間に一体なぜ崩落したのか?」。

2018年にコンサルタントが作成した報告書がある。作成したのは、同マンションの管理組合が建物の検査を依頼したエンジニアだ。その報告書を元に1200万ドルの修復プロジェクト計画が実行されることになり、まもなく開始される予定だった。ただ、その時点ですでに、マンションの管理側が構造的な問題について警告を受けてから2年半以上経過していたのだ。

その報告書に記されていた鉄筋の腐食がこの建物の支柱またはその周辺部分に起きていたとすれば、この状況は重大問題となっていたはずであり、崩落の十分な原因となる、とデューゼンベリー氏は言う。「私が調査官なら、要因としてこの点を調べる」。

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