JR九州、「被災と復旧」を際限なく繰り返す苦悩 4年ぶり豊肥線再開の一方で肥薩線が豪雨被災
「熊本県はコロナ、地震、豪雨のトリプルパンチに見舞われている」と、熊本県の蒲島郁夫知事が嘆いた。全国で猛威を振るう新型コロナウイルスに加え、7月4日未明からの豪雨(「令和2年7月豪雨」)で球磨川が氾濫し広範囲が浸水、大きな被害が出た。そして、2016年4月14日に起きた熊本地震の爪痕も今なお深く残る。
ただ、熊本地震で被災し、運休が続いていたJR豊肥線の肥後大津―阿蘇間が復旧し、8月8日、熊本―大分間が4年4カ月ぶりに全線再開された。“トリプルパンチ”の解消に向け、事態が一歩前進した。
この日、熊本駅で行われた記念式典で、蒲島知事は「全線開通が将来に光を与えてくれる。経済活性化に大きく貢献することを願う」と、期待感を示した。
「負の遺産」一掃直後に被災
「どこから手をつけたらいいか、途方に暮れた」。記念式典の席上で、JR九州の青柳俊彦社長は熊本地震直後に現場を訪れたときの状況をこう振り返った。
沿線各所では斜面崩壊や土砂流入、橋梁損傷など甚大な被害が発生していた。その年の秋に予定されていた株式上場に備えて、2016年3月期決算で5215億円もの減損損失を計上し、“負の遺産”を一掃したと思った矢先の出来事である。九州新幹線や豊肥本線のほかの被災区間は早期に運転再開できたが、被害の最も大きい肥後大津―阿蘇間だけが最後まで残った。
地震から1年後、同社は復旧工事に着手した。当時、被災した鉄道路線の復旧費用の半分を国と地方自治体が負担すると定めた鉄道軌道整備法が適用されるのは赤字の鉄道会社に限られていたが、2018年6月の法改正で赤字路線であれば黒字会社への適用も可能に。50億円の復旧費用の半分は国と県が負担してくれることになった。
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