JR九州、「被災と復旧」を際限なく繰り返す苦悩 4年ぶり豊肥線再開の一方で肥薩線が豪雨被災

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今回の豊肥本線と肥薩線の例にみられるように、近年のJR九州は自然災害による被災と復旧の繰り返しだ。久大本線は2017年の豪雨で橋梁が流失し一部運休に。翌年に橋を架け替えて全線復旧したが、今回の豪雨で別の橋が流されて再び一部運休を余儀なくされた。

豊肥線の再開記念式典後、取材に応えるJR九州の青柳俊彦社長(記者撮影)

被災したら修復するのでなく、被災しないような強い鉄道インフラを造ることはできないのか。豊肥本線全線再開記念式典後の囲み取材で青柳社長にこんな質問をしたところ、「そのような抜本的な対策は取れない」という答えが返ってきた。「当社としては、国の治水対策の状況に合わせて、それに見合った対策を取るしかない」。

復旧には多額の費用

しかし、想定される事態に万全な備えを行うのが経営というものだ。JR東海やJR東日本は将来の大地震に備え、それぞれ独自に新幹線のインフラ補強を行っている。こうした事前の取り組みをJR九州は行えないか。青柳社長は、「天災を100%防ぐだけの体力は当社にはない。できることをやっていくしかない」と話す。JR九州にはJR東海やJR東日本が新幹線で行っているような取り組みができるだけの経営体力はないということだ。

代わりに頼るのが国や自治体の資金だ。鉄道軌道整備法が改正されて、インフラの復旧に際し国や自治体の支援を受けやすくなった。

2013年8月、島根県西部を襲った豪雨による濁流でJR三江線は井原川橋梁の橋脚が流失するなど大きな損害を被った。県とJR西日本は多額の費用をかけて復旧作業を行い、2014年に全線再開したにもかかわらず、そのわずか4年後の2018年には利用者の低迷を理由に全線廃止となった。改正鉄道軌道整備法が長期計画の策定を求めているのは、こうした事態を想定し、復旧費用の無駄遣いを避けるためと思われる。

赤字のローカル線が豪雨や地震で被災し、JR九州が独力で復旧できないという事態は今後も起きるだろう。そのたびに復旧方法をめぐって関係自治体と議論することになる。毎年のように発生する自然災害が、JR九州にとってこれまで以上に大きなリスク要因になっていることは理解しておく必要がある。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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