日本一「リッチ」な村の手厚いコロナ支援の中身 水道基本料金免除、高齢者に商品券1万円…

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また、村は30年以上前から健康長寿への取り組みに力を入れてきた。きっかけは1988年に愛知県から老人医療費の高騰を改善するよう指導されたことだった。1991年に「飛島村日本一健康長寿村研究会」を発足させ、住民の協力を得て継続的な調査研究を実施。その成果をもとに健康長寿村づくり事業に取り組んだ結果、老人医療費は対国比106%(1988年から1990年の平均)から81%(1997年から2001年の平均)へと25%も下がったという。

「愛知県の後期高齢者医療の事業概況」という報告書に掲載されている愛知県内の市町村別1人当たり医療費(2018年度)をみると、飛島村は年間76万1693円で県内で3番目に少ない。県の平均が94万4634円だから、18万円以上も抑えられている。これも健康長寿に向けた取り組みの成果かもしれない。

かつては貧しかった飛島村

一連のコロナ支援策、住民への充実した福祉政策は村の財政基盤が盤石だからこそ実現できたものだ。単年度予算(一般会計)が60億円ほどなのに、2020年度末の基金残高が約79億円もある。財政力指標は全国1位の2.21、経常収支比率は69.9と理想的な水準だ。

飛島村はもともとは農村だった地域で、かつては本当に貧しい村だった。1960年当時の財政力指数は0.22。財政破綻した当時の夕張市と同レベルだったのである。それが、臨海工業地帯建設に伴い1970年代から名古屋港の物流拠点として成長、繁栄してきた。

この半世紀の歩みのなかで、さまざまな施策を通じて、村が潤った分は行政サービスを通じてきちんと村民に還元するというスタイルを確立してきたのである。コロナ禍と闘う全国各地の過疎地域の自治体からすれば、なんともうらやましい自治体である。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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