日本に「炭素税」の導入が求められる合理的な理由 炭素コストの明示化こそが最大の成長戦略となる

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▶ 取引費用:排出量取引は、排出権の売買に取引費用が生じる。ただし、適切に設計すれば取引費用は小さい。

▶ マクロ経済との関係:排出量取引は、好景気時には排出権の需要が増えて排出権価格が上昇、不景気時にはこの逆が生じ、カウンター・シクリカル(景気振幅抑制的)といえる。同時に、排出量取引は、技術革新が起きても排出権価格が低下するだけで追加的な削減が起きない。

▶ 運用の複雑さ:排出量取引は、初期配分・オークション、ルール整備など複雑。

2020年時点で31の国・地域が排出量取引制度を、30の国・地域が炭素税を導入しており一方が決定的に優れているというわけではない。しかし、高い排出削減が求められる状況では「補完措置との相性」は重要だ。シンプルなこと、価格が安定し予測可能性が高いことも考慮すれば、炭素税を基礎とした制度が望ましい。

各国の炭素税

わが国は、2012年に地球温暖化対策税を導入。税率は289円/CO2トンと低い。税収は特別会計に入れられ、省エネ対策、再エネ普及、化石燃料クリーン化などに使用される。また、温暖化対策が目的ではないが、石油石炭税や揮発油税(ガソリン税)も存在し、炭素税導入時はこれら既存措置との関係整理が必要だ。

日本エネルギー経済研究所によれば、主要国の税率(/CO2トン)は、スウェーデン1万5470円、ノルウェー6912円、デンマーク3100円、スイス1万1140円、フランス5930円、イギリス2870円、カナダ・ブリティッシュコロンビア州3010円などだ。

税収の使途を見てみよう。

スウェーデン・・・一般財源で法人税引き下げと一体的に導入
ノルウェー・・・一般財源で所得税減税に活用
デンマーク・・・一般財源で自主協定締結企業への補助金供与や社会保険雇用者負担軽減等と一体的に導入
スイス・・・3分の2程度を国民・企業へ再配分、残り3分の1程度を建築物改装基金へ充当
フランス・・・一般会計から競争力・雇用税額控除、交通インフラ資金調達庁の一部、およびエネルギー移行のため特別会計に充当
イギリス・・・一般税源
カナダ・ブリティッシュコロンビア州・・・税制中立税として法人税等の減税に充当
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