これまで厳しい水際対策と行動管理で、欧米に比べると新型コロナ感染症による死亡者数を格段に低く抑え込んできた東アジアで、感染が急増してきている。感染力が強い変異株に国境を突破された各国が直面しているのは、日本が経験してきた課題である。
飲食店など街中に隠れた感染連鎖、国民のコロナ疲れ、そしてワクチン接種の遅れ。いまや日本は東アジアにおいてコロナ対策の課題先進国となった。さらに、東アジアでは感染を抑制してきたがために、皮肉にも欧米に比べ相対的にコロナへの脅威認識が薄く、ワクチン供給は後回しにされ、「東アジア・パラドックス」ともいえる状況が生じている。
中国はワクチン接種を怒涛の勢いで進めるが、その影で台湾ではワクチン確保が難航した。東アジアの死角と課題は何か。G7、Quad(日米豪印)、そして日本は、この現状にどう向き合ったらいいだろうか。
東アジアのコロナ感染状況
主要国における直近2週間の人口100万人あたり死者数を見てみよう。欧米はワクチン接種により顕著な減少傾向にあり、アメリカは今年2月に130人を超えていたが最近では同14人、イギリスも今年2月に同200人を超えていたが同2人まで減った。
一方、東アジアで感染が急拡大したのはマレーシア、フィリピン、インドネシア、台湾である。日本もGWの大型連休後に感染者と重症者が急増したが、緊急事態宣言によって減少傾向にあり同5人程度となった。韓国とシンガポールも一時は感染拡大に見舞われたが、徹底した検査とワクチン接種により1人以下に抑え込んでいる。こうした中、中国は、ほぼ一貫して感染をコントロールしてきている。
東アジアは迅速な国境管理と行動管理でウイルスの拡散を抑え込んできた。しかしインドで最初に検出され、感染力が従来株の2倍程度のデルタ株が急速に広がる中、コロナ前の備えや、これまでの対応だけでは感染を制御しきれなくなっている。
台湾では、航空会社のパイロットが国外から持ち込んだ変異株が、隔離中のホテルから市中に広がった。航空会社乗務員の隔離期間を3日間に短くしていたことが、あだになった。さらに、変異株を検出したときにはすでに繁華街で市中感染が始まっていた。半導体封止・検査大手、京元電子の工場で働く外国籍労働者にクラスターが発生し、生産ラインの一時停止に追い込まれるなど、半導体のサプライチェーンにも影響が出つつある。
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