東アジア「ここへ来てコロナ感染急増」に映る難題 国境突破された各国に対し日本は何ができるか

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実は、中国はmRNAワクチンの確保にも先鞭をつけていた。ファイザーが生産するmRNAワクチンは、ドイツのバイオベンチャー、ビオンテックとの共同研究により開発された。昨年3月、そのビオンテックと、ファイザーよりも先に商品化について契約していたのが中国製薬大手の上海復星医薬集団(Fosun Pharma)であった。2020年3月16日の復星医薬とビオンテックのプレスリリースでは、mRNAワクチンの流通対象は「中国」とだけ書かれていた。しかし、その中国がどこを対象とするのか、その後、大問題となる。

「大中国市場」という台湾排除の論理

2021年2月17日、台湾の感染症危機管理を指揮する陳時中・衛生福利部長は、ビオンテックとのmRNAワクチン調達契約が最終段階で頓挫したことを明らかにした。その理由として、復星医薬とビオンテックの契約が台湾を含む「大中国市場(Greater China market)」を対象にしていたことが指摘されている。

2020年3月のプレスリリースでは単に中国としか記載されていなかったが、2020年12月11日、香港政府が復星医薬からのmRNAワクチン購入を発表した際、復星医薬が中国本土のみならず、香港、台湾、マカオでも販売権を持つと示唆する文言が現れた。これ以降、復星医薬は中国本土、香港、マカオ、台湾での販売権を持つと説明されるようになった。

中国の製薬業界では大中国市場をカバーする販売契約は珍しくないという。しかし、イノベーションのコア技術を保有するベンチャー企業が、中国企業に製造権や販売権を独占的に与える場合、その契約書に記された「中国市場」が台湾を含む「大中国市場」と見なされると、結果的に、台湾は革新的な製品へのアクセスから排除されてしまう。ワクチンや医薬品のみならず、今後、台湾が関わる全てのサプライチェーンにおいて極めて深刻な脆弱性になり得る脅威である。

欧米ではワクチン接種が進み、人々が「移動の自由」を取り戻しつつある。イギリスで開催されたG7サミットでは、2022年にパンデミックを終結させるためワクチン接種を加速化させ、2022年中に10億回分のワクチンを世界に提供することが合意された。

他方で、中国では復星医薬がビオンテックと合弁企業を設立し中国内でmRNAワクチン量産を始める。その生産能力は年10億回に達する見込みだという。中国のmRNAワクチンはワクチン外交において強力な武器になるだろう。

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