東アジア「ここへ来てコロナ感染急増」に映る難題 国境突破された各国に対し日本は何ができるか

✎ 1〜 ✎ 59 ✎ 60 ✎ 61 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

6月11日、楊潔篪・共産党政治局員はブリンケン国務長官と電話会談しG7を「偽の多国間主義」と批判した。アメリカがトランプ政権だった4年間、多国間主義を支えてきたのは中国だという思いがあるのかもしれない。しかしそれは、権威主義と偏狭なナショナリズムに支えられ、限られた権力者と利益集団が得をする、閉じられた多国間主義だったのではないか。

G7首脳コミュニケは世界人口の少なくとも60%がワクチンを接種する必要があることも確認した。世界78億人のうち47億人がワクチン接種を完了するには、2回接種なら94億回分が必要となる。これからのグローバルなワクチン接種で、G7と中国、どちらの生産したワクチンが先に世界に分配できるかの大競争が始まった。東アジアは、その最前線にある。

もともと東アジアを含むインド太平洋の国々にはQuad(日米豪印)がワクチンを提供するはずだった。その生産拠点として期待されていたインドはアストラゼネカとオックスフォード大学が開発したワクチンを量産し、5月29日時点で95カ国に計6630万回分のメイド・イン・インディアのワクチンを供給した。しかしインド国内の感染爆発でQuadによる供与は停滞している。

日本に期待される役割

ここで期待されるのが、日本の役割である。日本は6月2日にCOVAXワクチン・サミットを主催しワクチン供与に乗り出し、その第1弾としてアストラゼネカ社ワクチン124万回分を台湾へ、さらに100万回分をベトナムへ無償供与した。7月には東南アジアのみならず、アジア太平洋諸国へワクチン提供を拡大する。

日本はアストラゼネカ社から1億2000万回分の供給を受けることで合意しており、原液からワクチン製剤まで、国内で生産できる。純国産の日の丸ワクチンでなくとも、メイド・イン・ジャパンのワクチンは東アジアに希望をもたらすはずだ。

今こそ、G7と豪印を主軸とする民主主義勢力は結束し、自由で開かれた、より良い多国間主義を再興しなければならない。その重要な一歩が、安全で有効性の高いワクチンを、世界中へ公平に分配することである。日本には、東アジア・パラドックスを乗り越えるため域内でコロナ対応の教訓を共有しつつ、コールドチェーン整備支援と日本製ワクチン供与を主軸とした、ワクチン・サプライチェーン強靭化という日本ならではのワクチン外交の推進が強く求められている。

(相良 祥之/アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員)

地経学ブリーフィング

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

『地経学ブリーフィング』は、国際文化会館(IHJ)とアジア・パシフィック・イニシアティブ(API)が統合して設立された「地経学研究所(IOG)」に所属する研究者を中心に、IOGで進める研究の成果を踏まえ、国家の地政学的目的を実現するための経済的側面に焦点を当てつつ、グローバルな動向や地経学的リスク、その背景にある技術や産業構造などを分析し、日本の国益と戦略に資する議論や見解を配信していきます。

2023年9月18日をもって、東洋経済オンラインにおける地経学ブリーフィングの連載は終了しました。これ以降の連載につきましては、10月3日以降、地経学研究所Webサイトに掲載されますので、そちらをご参照ください。
この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事