「中国発インフレ」が世界に与える小さくない影響 世界の工場の物価上昇は各国に広がりつつある

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中国の国内経済がパンデミックから全快していないことが一因だ。個人消費はさえない状況が続いており、最近では豚の骨付き肉などが若干値下がりしてきている。男性用下着の値段も変わっていない。

ある日の午後、上海のテント市場で販売員たちに話を聞くと、食品価格に上昇の兆しは見られないとの答えが返ってきた。例えば、卵、牛肉の値段は以前とほとんど変わらない。

それでも、中国の物価上昇は国外に波及する可能性がある。中国指導部は自国通貨高を許容することで、インフレの脅威に部分的に対処しようとしている。人民元は現在、対ドルで2018年半ば以来の水準にまで上昇してきている。

人民元高で加速する中国のインフレ輸出

ドルに対する年初からの上昇率は2.2%と、人民元の価値の上昇はごくわずかだ。しかし中国はドル建て資源の購入に巨費を投じているため、絶対的なインパクトは大きい。中国は昨年、原油輸入だけで1762億ドル、さらに穀物輸入で508億ドルを費やしている。

中国の通貨は以前から大きな政治問題になっていた。アメリカの政権や議会は、中国は不当な通貨安政策で輸出競争力を高めているとして長年、中国政府を非難し続けてきた。

ところが今回、中国政府は人民元高を放置している。特に介入することもなく、世界経済の力学に任せて通貨高となるのを許しているのだ。

人民元の上昇はアメリカでは、中国製品の輸入価格上昇を通じて、インフレ圧力を強める可能性がある。

アメリカ労働省の統計データによると、中国からの輸入品の平均物価指数は2018年夏からパンデミックが始まるまでの期間に約2%下落し、その後横ばいになったが、昨年11月からは2%の上昇となっている。

「中国はインフレを輸出しているのだろうか」。オックスフォード・エコノミクスの中国専門家ルイス・クイス氏は自らの問いかけに、こう続けた。「人民元ベースでは、影響はそれほど明白ではない。ただドルベースで見ると、影響はもっと大きくなる」。

(執筆:Keith Bradsher記者)
(C)2021 The New York Times News Services

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