「中国発インフレ」が世界に与える小さくない影響

世界の工場の物価上昇は各国に広がりつつある

もちろん、世界的なインフレの波が今後も続くと決まったわけでは、まったくない。エコノミストの多くは、コロナ禍による工場休止やサプライチェーン(供給網)の混乱が解消すれば、物価上昇は和らぐと考えている。

中国指導部がインフレを恐れる理由ははっきりしている。過去数十年にわたる急速な経済成長は周期的な物価の高騰を引き起こし、そのたびに国民の怒りが高まった。実際、物価上昇は1989年に北京の天安門広場でデモが広がった一因ともなっている。当局は以前から非公式な価格統制や補助金を用い、国内のスーパーや家庭の食卓レベルで物価上昇が体感されにくくなるような策を講じてきた。

物価は現在、一部で確実に上がってきている。製紙会社は今年春、ナプキンやトイレットペーパーなどの大口販売価格を4倍に値上げした。豆腐用の大豆も価格上昇が続く。

インフレの影響を最も受けているのは…

だが、現時点でインフレの影響を受けているのは消費者よりも製造業者だ。オーストラリアから輸入している鉄鉱石やアメリカから輸入しているトウモロコシの値上がりが、中国の物価上昇の大部分を占めている。

中国国務院(内閣に相当)は5月、コモディティー(国際商品)価格の上昇を受けて、中小零細企業を対象にした補助金を発表。投機を押さえ込むため、商品先物取引にも新たな規制を加えた。一部の鋼材については輸出税を引き上げ、国内の在庫確保に力を入れている。

5月19日の国務院常務会議で李克強首相は「法令に従って独占や買い占めを断固として取り締まり、市場の監視を強化するよう」役人に指示した。

政府の対策によって卸売物価の上昇を遅らせることはできるかもしれない。だが、止めることはできないだろう。原材料価格の上昇でにっちもさっちもいかなくなった企業はいずれ値上げの方法を見つけ出すか、それができなければ生産を止めるほかなくなる。パルプ原料価格の上昇と「製品価格を値上げするな」という圧力の板挟みとなった製紙会社はこの春、保守管理を理由に一部の工場を休止した。

物価上昇は今のところ、中国の消費者にまで広がってきているようには見えない。5月の消費者物価指数は、前年同月比で1.3%の上昇にとどまった。

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