さらに、キャッシュレス決済の浸透により、国・地方自治体の行政サービスにも大きな変革をもたらす可能性がある。日本では、国・地方自治体が提供する行政サービスの支払いは現金・手作業によるものが主流であり、コロナ禍では各種給付金の給付遅れが問題となった。
これに対して、電子政府化の進む北欧のエストニアでは、個人の属性情報や税務情報を保有している共通基盤上で給付の可否を判断し、自動的に給付金を支払う仕組みがあり、今回の新型コロナウイルス感染に伴う休業補償に際しても、所得が3割減った人への条件付き給付が申請開始から2週間程度で完了した。
キャッシュレス決済比率が9割を超える韓国では、クレジットカード口座へのポイント付与等により、全世帯への給付を2週間程度で完了させた。キャッシュレス決済データに、個人の属性情報等の必要な情報が紐付くことで、税務申告や年末調整等の行政手続きも自動的に完了できるようになるだろう。
決済データの「共同利用」が鍵を握る
もちろんエストニアや韓国のような仕組みの実現に向けたハードルは低くない。これまで消費者、店舗、決済事業者間でバラバラに存在し、管理されてきたキャッシュレス決済データの連携・共有・管理が最も大きな課題となる。
その際、キャッシュレス決済データの匿名性やセキュリティをどう担保するかといったルール整備や、共同利用型の基盤の構築支援、また日々連携されるデータを的確に把握・分析し、タイムリーに政策に落とし込む体制整備などが国の重要な役割となる。
例えば、2021年夏頃からモデル実証事業が開始される予定の、総務省の自治体マイナポイントモデル事業*6は、まさにキャッシュレス決済事業者と自治体とが連携し、国のデータ基盤(マイキープラットフォーム)を活用して個人にポイント付与を実施しようとする取り組みだ。
こうした取り組みや仕組みが徐々に実現し、日本が「キャッシュレス途上国」から脱することに期待したい。
1 https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200611002/20200611002.html
2 https://mynumbercard.point.soumu.go.jp/service_search/
3 https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200626014/20200626014-3.pdf
4日本クレジット協会「クレジット関連統計」、日本銀行「決済動向」、キャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査」、内閣府「国民経済計算」よりNRI推計
5 https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_payment/pdf/20200210_1.pdf
6
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei07_02000108.html
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