政府本腰も「キャッシュレス途上国」日本の課題

日本におけるキャッシュレス決済比率は3割弱

キャッシュレス決済は社会に浸透しつつある一方、様々な課題が山積している。

消費者・店舗・決済事業者という3つの立場からそれぞれ見ていこう。

消費者
新型コロナウイルス感染拡大により非接触な決済手段としてキャッシュレス決済が重宝されたことも追い風となり、足元ではキャッシュレス決済の比率が高まっているが、海外諸国と比較すると低い水準に留まっており、特に地方においては現金への依存度が依然として高い。
店舗
店舗での現金管理、レジ締め、レシート発行等に要する業務負荷やコストは大きく、キャッシュレス化のインセンティブは大きい。一方で、店舗が負担するコストも小さくない。
クレジットカード決済に必要な端末はカード会社から店舗に無償提供されるケースが多いものの、店舗は販売代金の3.25%程度を決済手数料としてカード会社に支払う必要がある(手数料率はカード会社や決済代行業者によって異なる、上記は目安)。
また、「店舗への売上の入金サイクルが長い」という声もある。カード会社から店舗への入金サイクルは月1~2回で設定されていることが多いが、特に中小・小規模事業者にとっては導入のボトルネックとなっている*5
決済事業者
クレジットカードをはじめとして、交通系・流通系の電子マネーやQRコードといったさまざまなキャッシュレス決済手段が乱立している。また、それぞれの決済事業者ごとに店舗と契約をし、加盟店の管理をバラバラに行っている状況である。
こうした状況は、例えば国が政策で、とある地域の特定の業種のみでポイント還元をしようとした際、各事業者でその店舗を特定するデータが統一されていないため、データの統合作業が必要になるといった不都合が生じることになる。

キャッシュレス「将来的には8割」が政府目標

上記のように、キャッシュレス決済を社会に広く浸透させるためにはまだ課題が山積している状況であるが、経済産業省は「キャッシュレス・ビジョン」において、キャッシュレス決済比率を2025年までに40%、将来的には80%まで引き上げる方針を示している。

店舗におけるキャッシュレス決済導入のハードルとなっている決済手数料や初期コストの引き下げに対しては官民連携による検討が進められているほか、政府もマイナポイント事業の延長を検討するなど、キャッシュレス決済のさらなる普及を後押ししようとしている。

キャッシュレス決済の浸透により、我々消費者の生活利便性の向上が期待される。店舗のキャッシュレス化が進むことによりコストや業務負荷が削減されれば、その分のサービス向上という形で消費者に還元される。また、購買がキャッシュレス決済に移行することで、支払い履歴や支出状況を見える化し、家計の無駄の削減につながる。

また、いずれはすべての個人金融資産が、生まれながらに付与される電子アカウント上で一元管理・投資運用できるようになるなど、キャッシュレスによる資産管理の高度化が一気に進むかもしれない。使い過ぎやセキュリティを心配する声もあり、これらの消費者の懸念に対しては政府や事業者が一体となり対応策を講じていく必要があるが、キャッシュレス決済は今後一層社会に浸透し、我々の生活を便利で豊かにする可能性がある。

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