マレーシアでコロナ感染爆発が起きた当然の理由 厳しく制限しても破る者が続出し抑えきれない

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先述の感染者追跡アプリ「マイセジャテラ」から接種予約が可能となっているが、両日ともに予約のためのアクセスが殺到したことでシステムエラーが多発。地元紙マレーシアン・リザーブによると「繰り返し”あなたはロボットですか”と延々にオンライン上で尋ねられ辟易としたわ」「2時間も無駄にしたわ!デスクトップ、ラップトップ、iPad、さらには2台のスマートフォンまですべて試してみたけれど、いずれも予約に至らなかった、もううんざりよ」などという声が紹介されている。

イギリス・アストラゼネカ製のワクチンの応募受け付けが開始されると同時に、申し込みが殺到してシステムがダウン。SNS上には、あらゆるデバイスをフル活用して予約を完了させようとする市民の投稿が溢れた(左、写真:Whatsappより)。首都クアラルンプール市内のワクチン接種会場。予約制にもかかわらず、未予約の市民も接種を求めて駆けつけ、長蛇の列が発生。ソーシャルディスタンスはもちろん保たれていない(右、写真:市民提供)

さらに、いよいよワクチン接種当日を迎えると、会場の外には長蛇の列。予約できなかった市民までもが駆けつける事態が起き、感染を防ぐためのはずのワクチン会場にソーシャルディスタンスも守られない密集した状態が生まれてしまうなど、混乱を極めた。 SNS上では、「ワクチン会場の中ではソーシャルディスタンスが保たれていたが、外はカオスとなっていた」と指摘する書き込みもみられた。

写真撮影コーナーを設けるなど試行錯誤

高齢者の中では副反応などへの不安から接種に及び腰な人々もいるとされるなか、集団免疫を獲得するため、ワクチンを接種したことをSNSに積極的に投稿する市民の動きも増えている。また、接種率を高めるため、インスタグラムなどに投稿しやすいよう、写真撮影コーナーが設けられるなど、政府が試行錯誤している状況がうかがえる。

ワクチン接種会場で接種終了後、ソーシャルメディアに投稿するように設けられた看板の中でピースサインをする女性(写真:Whatsappより)

変異種の動向も気掛かりだ。

5月31日時点で、マレーシアでは、変異種が119件確認されており、うち南アフリカ型の変異種が89件、英国型が9件、インド型が6件となっている。特に懸念されているのは、ベトナムで新たに発見されたインド型の変異ウイルスに英国型に含まれている変異が加わった、特に感染力が強いとされるウイルスだ。

同じ東南アジアで発見された、いわばハイブリッド型のウイルスに、マレーシア政府も強い警戒感を募らせており、ヌール・ヒシャム・アブドラ保健局長は、「まだこのハイブリッド変異種はマレーシア国内では発見されていないものの、国内に入ってくることを防ぐことが極めて重要であり感染拡大防止に不可欠だ」と述べている。

現在、医療体制も逼迫し始めている。当面、厳しい都市封鎖は2週間とされているが、状況によってはさらに延長される可能性もあり、予断を許さない状況だ。

海野 麻実 記者、映像ディレクター

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うんの あさみ / Asami Unno

東京都出身。2003年慶應義塾大学卒、国際ジャーナリズム専攻。”ニュースの国際流通の規定要因分析”等を手掛ける。卒業後、民放テレビ局入社。報道局社会部記者を経たのち、報道情報番組などでディレクターを務める。福島第一原発作業員を長期取材した、FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品『1F作業員~福島第一原発を追った900日』を制作。退社後は、東洋経済オンラインやYahoo!Japan、Forbesなどの他、NHK Worldなど複数の媒体で、執筆、動画制作を行う。取材テーマは、主に国際情勢を中心に、難民・移民政策、テロ対策、民族・宗教問題、エネルギー関連など。現在は東南アジアを拠点に海外でルポ取材を続け、撮影、編集まで手掛ける。取材や旅行で訪れた国はヨーロッパ、中東、アフリカ、南米など約40カ国。

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