厳しい規則に則って活動を制限してきたかのように見えるマレーシアで、いったいなぜ感染がここまで急拡大してしまったのか。
第1に指摘されているのが、5月中旬に迎えたイスラム教徒の断食月(ラマダン)明けの大祭、ハリラヤ・プアサに起因する新規感染者の急増だ。
1カ月間に及んで日中の飲食が禁止される断食月を終え、盛大に祝われるハリラヤ・プアサでは、例年であれば親族同系色などで揃えた色鮮やかな伝統衣装を新調し、日本の大晦日と同じく自宅の大掃除に勤しむ。その後は、マレー料理のご馳走を自宅でもてなす「オープンハウス」を催し、親族や友人らが次々とひっきりなしに訪れたり、遠路はるばる里帰りしたりなど、中華系の旧正月の民族大移動のマレー版が繰り広げられる。
しかし、断食月の期間中、マレー風の伝統菓子やココナッツミルクで炊いた米とピリ辛のサンバルなどを混ぜて食べるナシレマ、揚げチキンなどを売る屋台が街中の至る所でずらりと並ぶナイトマーケットも、今年は入り口で厳重な警備に当たる警察官が見張る厳戒態勢。入場する際にも、感染者追跡アプリ「マイセジャテラ」で登録して体温を測定したことが見届けられてからのみ中に入ることが許され、もちろん人数制限もあるため、ソーシャルディスタンスを保って入場前の行列ができる光景も見受けられた。
20万人が規則を破り、帰省していた
このように、イスラム教徒の年に1度の盛大な祭りの期間にあっても、厳しい規則に則って厳密に国民の行動が制限されていたかのように当初は見えたが、実は「抜け道」を見つけルールを無視する国民が続出していた。
「バリク・カンポン」と称される里帰りは禁止され、州をまたぐ移動は厳しく禁止されていたにもかかわらず、蓋を開けてみれば実に20万人もが規則を破り、ハリラヤ祭りの期間中に帰省していたことが発覚したのだ。
州を跨ぐ移動には、事前に警察に申請して許可書を得る必要があるのだが、「仕事」で州越え移動をする必要があるなどと虚偽の申請をして、実際には里帰りをしてハリラヤを親族と祝うケースなども少なくなかったという。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら