東京オリンピック・パラリンピック(以下、東京五輪)開幕まで2カ月を切った。コロナ対策の要諦であるワクチン接種は全国で始まったものの、自治体は朝令暮改の政府に振り回されて現場は混乱を極める。接種は菅義偉首相の「1日100万人」の威勢のよい掛け声とは裏腹に遅々として進んでいない。
そればかりか、各国選手団、世界のメディアが殺到する東京で、どのような防疫態勢がとられるのか。政府、東京都、五輪組織委員会からは今でも雲をつかむような話しか出てこない。
コロナ禍のために深甚な制限を受け、開催中止に追い込まれたスポーツ興行は少なくない。そうした中、参考になる事例がある。香港唯一の競馬の競技団体、香港ジョッキークラブ(以下、HKJC)だ。
コロナ禍に見舞われた昨年来、HKJCは国際招待競走を3回開催。昨年12月、今年4月春には日本から強豪馬と競馬関係者を招き、関係者から感染者を一人として出すことなく、無事に成功させた。
現地ではどのような防疫態勢がとられていたのか。その事例より、世界中から選手団、関係者、メディア関係者が大挙して来日する東京五輪でどのような防疫態勢が必要か探ってみたい。
コロナ禍の中で3回の国際招待競走を実施
HKJCは年に2回、世界から強豪馬を招待する国際招待競走を開催している。4月最終週日曜の「チャンピオンズ・デー(CD)」と12月第2日曜の「香港国際競走(HKIR)」である。
香港競馬の国際化を目指して創設された2つの国際招待競走で、多くの日本調教馬が好成績を上げてきた。ここで海外遠征の経験を重ねて世界の競馬最先進国が居並ぶ欧米へと飛躍。「鎖国競馬」「血統の墓場」などと揶揄されてきた日本の競馬が、世界の舞台にはばたく跳躍板ともなった。
このコロナ禍の下では、昨年4月のHKIR、12月のHKIR、今年4月のCDと3度の国際招待競走を敢行。
コロナ禍発生直後の昨年4月は海外からの馬はなく、地元香港の香港馬による、香港馬のための国際招待競走となったものの、昨年12月と今年4月には、コロナ対策に追われ香港遠征を手控えた欧米を後目に、日本からはあわせて11頭の強豪馬と騎手、調教師、調教助手、厩務員ら競馬関係者約20人以上が香港に遠征。
昨年12月のHKIRではGⅠ競走4レースの内、3レースに優勝。今年のCDでもGⅠ3レースの内、1レースを勝って日本競馬のレベルの高さを世界に見せつけた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら