50歳で「田舎に移住」1年後に気づいた3つのこと 銀座の職場を捨て三重の寒村に移り住んだ本音

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春には、サヤインゲンが沢山収穫できたので、それを毎朝食べていた。食事も非常にシンプルになった。時には、ラーメンなんかが食べたくなるので、街に買い物に行ったついでに食べるぐらい。それ以外に、わざわざ食べるために街に降りるのは面倒なので、外食をする機会は、ほとんどなくなった。

時間的なゆとりから来る金銭的なメリットも少なくない。スーパーへの買い出しは、人が少ない朝の開店と同時に行くことにしている。この時間帯は、前日に売れ残った商品が半額になっていることが多い。

納豆や豆腐、油揚げなどの定番商品を買うだけだが、ほとんど半額に値下げされている商品を買ってくるので、食費も極端に低く抑えられている。水道も井戸でポンプを回すごくわずかの電気代だけで水道光熱費も安い。暖房や風呂は薪なので、コストと言えるものは自分の労働力だけ。それも労働とはとらえておらず、都会で言えば、ストレス解消や体力づくりにスポーツジムに行くようなもの。

月の生活費は5万円以内に落ち着きそう

支出自体が少なく、その機会も少ないので、金銭問題を考えることも少なくなった。今は、自宅の改修や畑の獣害防止対策で支出がかさみ、月のカード支払いは10万円を超すものの、これらが一段落すれば、月の生活費は5万円以内に落ち着きそうだ。

都会生活では、仕事の悩みや人間関係、金銭の問題に頭を悩ませたが、田舎生活ではそうした問題はほとんどなくなった。その代わり、植物や野菜の美しさや不思議を考えたり、趣味と実益を兼ねた釣りを探求したりすることに時間を使っている。

体を動かして食べて疲れ果てたら寝るというのが生活の基本。これではあまりにシンプルすぎるので、たまに難解な世界情勢について原稿を書くのは、いい頭の体操になっている。人間、シンプルすぎても、なにか物足りなさを感じるのだろうか。

都会での生活を振り返ってみると、多くの物事がシステム化されて金銭を介在し、金で買えるものが多い反面、それらに縛られてしまい、かえって生活や人生が複雑化していたと感じる。情報やモノに振り回されることも多かった。

田舎の人たちは、天候や農業、野生動物など自然と向き合い、本物の暮らしを営んでいる人が多い。そこでの暮らしは、人類の歴史の中で当たり前だった非常にシンプルな生き方だ。

田舎に飛び込む前に伝え聞いていた煩わしい人間関係といったネガティブな要素は、移住者の立場で見れば、今のところ杞憂に終わっている。何事もやってみないとわからない。田舎暮らしに憧れている人はぜひ、始めてみることをお勧めしたい。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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