東京藝大の名物教授が学生に問う独特課題の意味 「チャーミングに異を唱えよ」の題にどう答える?

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オルタナティブな考えを提示するアートの視点を探ります(写真:koro/PIXTA)
東京藝術大学美術学部デザイン科で、箭内道彦教授は2年生の学生たちに「チャーミングに異を唱えよ」という課題を出した。一見すると奇抜な課題だが、その狙いとは……。
「『アート』が行き詰まった社会の変革に必要な訳」(6月6日配信)、「アートが社会の『分断』の壁を壊す為に必要な視点」(6月13日配信)に続き、23年にわたりNHK「クローズアップ現代」のキャスターを務めた国谷裕子さんが、“最後の秘境(?)” 東京藝術大学の12人の教授たちへインタビューし、「芸術=アート」から現代の日本社会を覗き込んだ『クローズアップ藝大』から対談内容を一部抜粋、再構成してお届けする。

問いかけはする。しかし、答えは話さない

国谷 裕子(以下、国谷):箭内さんはデザイン科の先生をされているわけですが、教えている姿よりも社会との関わりのほうのイメージが強いので、いったいこの方は大学で18歳から20代前半ぐらいの若者に対して、何を教えているんだろうって知りたいと思っているんですけれど。

箭内 道彦(以下、箭内):痛いところを突かれてしまいましたね(笑)。そういう質問来たらいやだなと思っていたんですよ。その質問に答えるとすれば、僕は多分、藝大の教員の中でいちばん教えるのが上手くないと思います。

国谷:何を伝えたいと思っているのか、何を与えたいのか、何を受け取ってもらいたいと思っているのか。そのためにどういう授業をされているのか知りたい。

箭内:そうですね。僕は自分が藝大の学生だった当時は、申し訳ないけど何一つ先生に教えてもらってないと記憶しているんです。でもそれが良かったなって今も思っています。それは、自由に楽しく4年間暮らせたっていうわけじゃなくて、自分で何かを見つけなきゃいけないという、ものすごい焦燥感に包まれていたからです。

答えを教えてくれる先生はいらないって僕は思っていて──それは他の先生方がものすごくしっかり教えられているから僕はそういうオルタナティブなポジションにいられるんですけど──できるだけ答えを話さないようにすることを意識しています。

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