東京藝大の名物教授が学生に問う独特課題の意味 「チャーミングに異を唱えよ」の題にどう答える?
問いかけはする。しかし、答えは話さない
国谷 裕子(以下、国谷):箭内さんはデザイン科の先生をされているわけですが、教えている姿よりも社会との関わりのほうのイメージが強いので、いったいこの方は大学で18歳から20代前半ぐらいの若者に対して、何を教えているんだろうって知りたいと思っているんですけれど。
箭内 道彦(以下、箭内):痛いところを突かれてしまいましたね(笑)。そういう質問来たらいやだなと思っていたんですよ。その質問に答えるとすれば、僕は多分、藝大の教員の中でいちばん教えるのが上手くないと思います。
国谷:何を伝えたいと思っているのか、何を与えたいのか、何を受け取ってもらいたいと思っているのか。そのためにどういう授業をされているのか知りたい。
箭内:そうですね。僕は自分が藝大の学生だった当時は、申し訳ないけど何一つ先生に教えてもらってないと記憶しているんです。でもそれが良かったなって今も思っています。それは、自由に楽しく4年間暮らせたっていうわけじゃなくて、自分で何かを見つけなきゃいけないという、ものすごい焦燥感に包まれていたからです。
答えを教えてくれる先生はいらないって僕は思っていて──それは他の先生方がものすごくしっかり教えられているから僕はそういうオルタナティブなポジションにいられるんですけど──できるだけ答えを話さないようにすることを意識しています。