東京藝大の名物教授が学生に問う独特課題の意味 「チャーミングに異を唱えよ」の題にどう答える?

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箭内:第2弾作りましたって送ってくる学生もいたりして。色を塗ったり立体を作ったりということでは全然ないんだけど、そういう経験が、なんていうか、デザインがものを伝えたり何かを変えていこうという仕事なのだとしたら、外側にあるそういうこととの共通性を通じていつか、個人の中で「開通」されていくと思うんですよね。そういうのを、えらい先生に見つかったら怒られるだろうなと思いながら勝手にやってます(笑)。

国谷:そういうとてもユニークな授業で、今「開通」とおっしゃいましたが、箭内さんは伝えようというよりも、何だろう、与えるということでもないですよね。

箭内:そうですね、広告っていうのは、1つは応援することだと僕は思っていて。商品を応援する、企業を応援する、それを使う人を応援する、その商品がある社会を応援する。もう1つ、広告は、その対象の魅力を最大化させて世の中に放つことって思っています。だから学生たちが、昨日と違った表情になるというのがすごく好きで。わ! これやってみたら、なんかキラキラしちゃってる、みたいなね。なんかその体験を積ませたい、ある種の成功体験だと思うんですけど。それが表現が機能しているっていう状態だと思うんです。

自分で自分を覚醒させる

国谷:箭内さんは著書の中で自分の10代20代30代のことをバネに40代50代を生きているとお書きになっていますが、自分が藝大生だった時にはあまり教えてもらった経験がないともおっしゃっています。そういう体験を踏まえて、若い人たちが今体験すべきことを大事にしたい、そういう思いがあるんですか?

箭内:それは強くありますね。僕の大学の4年間は全て挫折への4年間だったので。

国谷:本当ですか?

箭内:本当です。自分が学生の頃の成績表とか発掘されたら大変だなって思うくらい、多分いちばん番悪い成績で大学に戻ってきてる教員だと思います(笑)。

国谷:大学にいる間は自己肯定感が全く高まらなかったってことですか?

箭内:そうですね。先生方からも褒められなかったし、自分でも何1つやり切れていないなと思っていて。それは、サボってプラプラしてたとかじゃないですけど、何かを見つけられなかったみたいなことがあって。だからこそ、その復讐劇が今も続いているという(笑)。

それはそれで面白いなと自分でも思うんで、だから課題の成績が悪い学生に、「課題の成績が悪いことをどうバネにするか」っていうヒントは与えたいなと思うし、成績が悪いことをサラッと流しちゃうんじゃなくて、ずしんと重たく感じてほしいなという話はしています。

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