東京藝大の名物教授が学生に問う独特課題の意味 「チャーミングに異を唱えよ」の題にどう答える?

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国谷:でも、問いかけはするんですよね。

箭内:問いかけはします。授業でやっているのは、例えば2年生に出している課題は、「チャーミングに異を唱えよ」っていう課題。この世の中に生きていく中で自分が何か気が付いた、あれはおかしいんじゃないか、あれに不満があるっていうことを、まず見つけてくるんですね。で、それを、拳を振り上げて怒りを表明して「絶対反対!」って言うんじゃなくて、なんかみんながクスっと笑うような、賛成派も反対派もそのクリエイティブで1つになれちゃうような、そういう答え方を提示しなさい、という授業をやっています。

国谷:え! 難しそう。でも大事なことですよね。それができたらみんなまろやかになる。

怒りをまっすぐに表明すると線を引かれる

箭内:今すごく、とても必要なことなんですよね。怒りをまっすぐに表明するのも尊いんだけど、それをやっちゃうとそれこそ線が引かれてしまうというかね、そうじゃない人たちからすると、ちょっと怖い、自分はあそこには入れないと思ってしまうんですよね。それを「チャーミングに」っていうのは、多分広告の手法でもあると思います。あと3年生に出している課題は、「世界平和を実現するデザイン」。何を作ったら世界は本当に平和になるのかっていうもので、それを具体的に作るんですよ。

国谷:へえー。

箭内:「映像論」という授業には、映画監督の是枝裕和さんに非常勤講師で来てもらったり、お笑い芸人で芥川賞作家の又吉直樹さんにも来てもらったり、脚本家の宮藤官九郎さんが来たり、豪華なんですよ。豪華っていうか、なんていうんですかね、そういう人たちに会わせてみたいんですよね、みんなを。

国谷:とても嬉しいだろうな。触発されるでしょうね。

箭内:あとやってるのは、ラップを作る授業。「自分が今思っていることをラップにしてみんなの前で歌いなさい」って。RHYMESTER のMummy-D を毎年講師に呼んでます。そんなのどこがデザイン科なんだって感じですけど(笑)。そのあと、そこに映像を付けていくんですよ。みんな活き活きやっています。

最近やっていちばん面白かったのは、それぞれに30分のラジオ番組を作れっていう課題。そこで自分が今思っていることを話してもいいし、自分がものを作る時に感じていることを話してもいいし、自分が好きな音楽をかけてその理由をしゃべってもなんでもいいんです。みんな、誰にも言わなかったことを初めて言葉にする時の緊張とざわめきと、心地よさみたいなものを感じて、ちょっと病みつきになってますね。それこそ言葉にすることによって、です。

国谷:そうですか。

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