スタバ「1600店超」でも安定運営できる圧倒的強み 日本開業25年で行う「原点回帰」と「深化」

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ロースタリーでの飲料は、一杯一杯を一定の時間をかけて提供する。一方で通常店は出る商品数も多く、店内のカウンターは決して広くない。どう水平展開しているのか。

「商品の裏側にある本質的な価値を踏まえ、どの部分を打ち出すかを思案します。コールドブリュー コーヒー フラペチーノは『約14時間かけて水で抽出』にこだわりました。コア店舗に足を運び、意見交換をしながら、毎回深く深く考えます」(加藤氏)

ともに他業界から転じた加藤桜子氏(左)と鈴木麻子氏(筆者撮影)

バーテンダーの技術を動画で学ぶ

(2)「アメリカでの創業時や日本の喫茶文化をリスペクト」は数年前から行ってきた。いわば「原点回帰」の視点といえる。

2019年5~6月には全国の店舗で「スタアバックス珈琲」を訴求した。日本の喫茶文化を意識し、「プリン アラモード フラペチーノ」も販売。この視点は現在も続く。

「『ダブル トール ラテ シェケラート』を発売しました。25年前に日本での最初の1杯でオーダーされた『ダブル トール ラテ』をモチーフにしたものです」(鈴木氏)

エスプレッソベースにオレンジ風味の味わいを際立たせる、商品技術も共有する。

「ロースタリーのプロのバーテンダーが行うシェイクの様子を撮影し、全国の各店舗に動画を配信。シェイク技術を学び、攪拌(かくはん)の均質化を図りました」(加藤氏)

また、(3)「温故知新をしつつ、さらに深めようとする」は進化・深化の視点だ。競合に比べて出遅れていた「コーヒーの国内焙煎」にもアクセルを踏む。これまでは海外で焙煎していた豆の輸入が多かったのだ。

「全国の店舗で使用するコーヒーメニューの7割以上は国内焙煎」となり、「今後はリテールパックと呼ぶ販売用のコーヒー豆の国内焙煎割合を高めていく」と決意を示す。

既存店内に設置された「スタアバックス珈琲」の看板(写真:スターバックス コーヒー ジャパン)

今回紹介した3つの視点での活動には、さまざまな意味があるが、大きな視点では「サステナビリティ」(持続可能性)が挙げられる。

スターバックスのサステナビリティは、地球環境や倫理を考えたコーヒー豆の買い付けやリサイクル、植物由来の商品の増加、ゴミの削減などが目立つ。だが、国内で1600店超の店舗を運営していくのも、サステナビリティだ。店舗が増えるほど、それを支える人材育成も急務となる。

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