スタバ「1600店超」でも安定運営できる圧倒的強み 日本開業25年で行う「原点回帰」と「深化」

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独特な言い回しが持ち味のスターバックスは、表立っては、人材開発のような専門用語を使わない。よく用いられる言葉は「コーヒーパッション」(情熱)だ。店舗起点の活動も重視する。社内では「高いレベルでのコーヒーエデュケーション(教育・育成)の実践」を掲げる。

なぜ1600店超に巨大化しても、各店を安定運営できるのか。

その答えは「自社ブランドを愛する従業員の多さと熱意」だろう。

4万人の人員規模になると、得てして部門の壁や対立も起きるが、それが起きにくい。その理由は「お互いに称賛し合う文化」だ。手書きメッセージも頻繁に贈るなど、他社から転職してきた人が「予想以上」と驚く。

ほめながら指導するので、学生アルバイトもやる気を出し、所属店の売り上げや接客レベルを高めるために創意工夫を行う。卒業して他社に就職しても思い入れは続く。スタバOGの20代会社員(複数)からは「今でも大好きなブランドとして利用する」と聞いてきた。

店舗に戻ってきて、楽しんでほしい

こうした人材に支えられて前途洋々、とはいかないのがコロナ禍の状況だ。直営店率が9割を超えるスターバックスは、休業や営業時間短縮で売り上げ減となると企業体力が奪われる。

昨年からEC事業もより注力するが、基本は店舗への顧客回帰だ。地道な仕掛けも行う。

毎年人気の正月の福袋――。オンライン販売となった2021年版には「コーヒー豆引き換えカード」を入れた。最初に決まった豆を同封するのではなく、店に引き換えカードを持って行けば、豆の種類(対象商品には制限あり)や挽き方を選べるものだった。

一方で各店ではテイクアウト需要も増え、店舗での訴求も変わってきた。今後は「ご自宅に帰ってからも余韻を楽しんでいただく施策もさらに打ち出したい」と関係者は話す。

「昨年の春や初夏と比較すると、安全を確保しながら店を運営し、飲食を提供する経験値が出てきた」と話す加藤氏。コロナの先行きは懸念材料だが、持続可能な店舗運営のためにさまざまな工夫を凝らし、1600店体制を維持して成長できる売り上げ確保を目指す。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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