法案は、防衛関係施設や原子力発電所、空港など重要インフラの周囲約1キロと国境離島を「注視区域」に指定。また、自衛隊の司令部や無人の国境離島など、特に重要な場所は「特別注視区域」と位置づけ、一定面積以上の土地取引について、当事者に氏名、国籍、利用目的の事前届け出を義務付ける。
現在、淡水は世界的に不足し、外国資本による地下水独占が住民の生活を脅かすケースが各地でおきている。今後は一層の水不足が懸念されており、同じ事態が日本で起こらない保証はまったくない。だから「外国資本が水を狙っている」という主張は理解できる。
地下水に関する一定のルールが必要
しかし、注意しなくてはならないのは、地下水を汲み上げ過ぎ、周辺に迷惑をかけるのは外国資本だけではない、ということだ。あらゆる利用者に、その可能性がある。
また、地下水があるのは森林などの水源地だけではない。地下水が大量にあるのはむしろ盆地や平野部だ。平野部では土地取引は活発に行われており、規制をかけるのも難しい。
外国資本に限らず、土地取得者による地下水濫用を避けるには、地下水に関する一定のルールが必要だろう。さまざまな議論があるなかで、今年3月、有識者で構成される水循環基本法フォローアップ委員会は「水循環基本法への地下水関連規定の追加に関する報告書」を、水制度改革議員連盟石原伸晃代表へ提出している。報告書では、地下水採取の制限を条例で定めることができる規定を条文に追加することについて提案している。
地下水の状況は地域ごとに異なるため、国が平均的なルールを作るより、自治体が主導して地元の状況にあったルール作りをすることが望ましい。そして、国はそれを後ろから支えるべきである。
たとえば、「地下水の見える化」だ。表流水と地表水の最大の違いは、目に見えるか、見えないか。地表水は人の目に触れるから実態把握が容易であり、課題がわかりやすい。一方で、地下水は実態把握が難しい。現状把握の調査について、国は支援すべきであろう。
さらに言えば、ゴールはルールをつくることではない。ルールができたあとの運用が大事だ。地域の地下水利用者が、それぞれ状況に応じて、保全しながら活用することだ。
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