「日本の水が外国から狙われている」のは本当か 土地の所有者が、その地下水も所有できる実態

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なぜ北海道議会は「土地を買われた」ことを「水資源の争奪」と解釈したのか。実は、森林を取得した場合、保安林等の法的規制がかかっていなければ、所有者は比較的自由に開発できる。木を伐採してもよいし、温泉を掘っても、地下水を汲み上げてもいいと考えられる。

日本の土地取引は所有者と購入希望者の合意で成立し、取得後の所有権は非常に強い。そして、民法第207条には、「土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ」と規定されている。法的には、土地の所有者に、その地下にある水の利用権があると解釈されている。

土地を取得した場合、その所有権は地下にも及ぶ(イラスト:筆者作成)

北海道議会の動きは、国や地方自治体に大きなインパクトを与えた。各地の市町村議会では「うちは大丈夫か?」といった行政への質問が相次いだ。議員は、「水源林が予想外の地権者に渡り、乱開発や過度の取水で住民の生活が脅かされるようになっては手遅れ。いますぐ手を打つ必要がある」と口を揃えた。

これに対して行政側は「現時点で外国資本による大規模な森林買収の動きは確認していない」とし、「事態に適切に対応するため組織を設置する」などと回答した。

外国人による土地取得の規制がない日本

日本には現状、安全保障上の懸念がある地域でも外国資本による土地取得の規制はなく、外国人であっても自由に所有可能だ。外国人が土地を所有できる国はアジアでは珍しい。共産圏である中国、ベトナムなどは外国人の土地所有を認めていないし、韓国、インド、シンガポールなどでは土地の所有は可能だが、いずれも条件つきとなる。

農水省が2010年から公表し始めた外資による山林買収状況によると(累計値)、2010年は43件、831ヘクタールだったのが、2020年には465件、7560ヘクタールと10年間で面積は9倍に拡大。農地は2018年から公表され、2020年は3件、47ヘクタールだ。

一見少ないが、日本人や日本法人をダミー的に登記名義人にしたケースや未届出のケースはカウントされていない。

また、太陽光発電、風力発電の用地(推定20万ヘクタール)の中にも外資分が相当あるが、こちらも詳細は不明だ。政府のこれまでの調査では、中国系資本が太陽光発電などのエネルギー事業者として買収にかかわったとみられる土地は、全国で約1700カ所に上る。リゾート開発なども含めた中国系資本が自衛隊施設などの周辺で土地買収にかかわったとみられる事例も約80カ所確認されている。

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