数字が示す「日本人がコロナで脱東京」の虚構 東京の転出超過は外国人、日本人は7440人増

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都内の人口増減で注目は、26ある市部の日本人人口の増加だ。小金井市1691人、三鷹市1515人、国分寺市1388人など合計で7737人も増えている。23区よりも周辺市部の増加が東京の人口増につながった形だ。

東京都の人口増減、転入転出状況を中心に、コロナ禍1年の人の流れを検証してみたが、転入超過数こそ減ったものの「東京一極集中」の大きな流れが変わっていないことがおわかりいただけたと思う。

もちろん、一部に脱東京の動きは出てきているが、エッセンシャルワーカーの人々、リモートワークに消極的な企業に勤務する人々、受験を控えた子どもを抱える世帯、そして非正規で働いている人々、単身高齢者など、コロナ禍だからといって簡単に東京を離れられない人が多い。

リゾート地や首都近郊の広い一戸建てでリモートワークといった新たな生活スタイルを取り上げる記事が目立つようになってきたが、まだまだひと握りの人々の動きだろう。

都の調査で「東京は住みよい」が6割

最後に、興味深い意識調査の結果を紹介しよう。東京都がコロナ禍の昨年秋に実施した「都民生活に関する世論調査」だ(有効回収標本2273)。

調査項目の中に「東京の住みよさ」「定住志向」があった。住みよさに関しては57%が「住みよい」と回答し、「住みにくい」はわずか6.8%だった。「東京に今後もずっと住み続けたいか」という質問には、なんと70%が「住みたい」と回答している。「住みたくない」は10%しかなかった。

むろん、一調査の結果にすぎないが、「脱東京」とはやし立てているのはメディアだけなのかもしれない。

とはいえ、東京からの転出者はどこへ向かっているのか。次回は都民の転出先に焦点をあててお伝えしたい。

山田 稔 ジャーナリスト

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やまだ みのる / Minoru Yamada

1960年生まれ。長野県出身。立命館大学卒業。日刊ゲンダイ編集部長、広告局次長を経て独立。編集工房レーヴ代表。経済、社会、地方関連記事を執筆。雑誌『ベストカー』に「数字の向こう側」を連載中。『酒と温泉を楽しむ!「B級」山歩き』『分煙社会のススメ。』(日本図書館協会選定図書)『驚きの日本一が「ふるさと」にあった』などの著作がある。編集工房レーヴのブログも執筆。最新刊は『60歳からの山と温泉』(世界書院)。

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